風光明媚
□うざ男の正体
1ページ/2ページ
「毎日毎日よくもこう資源の無駄遣いしますね。地球と手紙用の紙作った人に土下座した方がいいんじゃないですか?」
手紙に耐えかねたあたしはある日、ポストの前でうざ男を待ち伏せして待っていた。
今日こそ、直接決着をつける。
「何を言ってるんだい。僕の愛をこめた手紙が資源の無駄遣いだなんて。」
「そのままの意味ですよ。それに、こんなくだらない言葉の羅列に時間を費やすなんて、あなたの体力も多少なりとも無駄になってるでしょうし。」
「いとおしい君のためなら僕は体力も、この命すらも惜しくはない。」
真顔で言ううざ男。
あたしの頭に、ある疑問が沸いた。
どうしてこいつはここまであたしに心酔するんだ。
恋愛じゃない、何か別の目的があるんじゃないだろうか。
「本当に、私と恋愛することが私の目的?」
わずかに芽生えた警戒心を声に滲ませて、あたしは尋ねた。
「…君は、自分のことになるととても鈍いんですね。」
うざ男の口調がわずかに変わった。
「恋愛が目的じゃない?…やっと気づいたのか。車のナンバープレートひとつで誘拐犯を探り出した奴とは到底思えないな。」
なぜ、知っている。
「僕は情報屋だよ。裏では割と知名度の高いあのセルロが数人の子供に倒されたと聞いてね。
子供の中に獄寺隼人が居た、と聞いてボンゴレの情報を探ろうとした。
そして、数多のセキュリティーを潜り抜け、最重要機密に君を見つけた。異世界から来たという君に興味がわいて、接近してみようと思ったんだ。
どれほどの知能を持っているのか、調べて君の情報を高く売りさばこうと思った。
セルロを倒した、ということ。これに関して僕は素直に可能性を持っている、と思った。
ただ、君はまだ駆け引きを知らない。
本気で策士になるんだったら、セルロを倒すんじゃなくてより損失の少ない方法…駆け引きで相手の戦意を奪うこともできなきゃいけない。
たとえ一般の男であろうと、どれだけ嫌でも、何か有益な情報を持っているかもしれない。
だから、好意を寄せられている相手の恋愛感情に応えるふりをして、知ってる情報を聞き出すぐらい出来なきゃいけない。
どこのファミリーの策士も、自分の体を対価に情報を聞き出す。
その点が君に足りない。今聞いたから、これからはもうできるかも知れないけど。」
この男が言っていることに腹が立たなかった訳ではない。
でも、それ以上にここまで気づけなかった自分が腹立たしかった。
気付くのが、遅すぎた。
「でも、今君が成長したところで、僕が君の情報を売れば、君はあっさり殺される。可能性の芽を摘もうとする者に。
…さて、これを阻止するために君はこれからどうする?僕は君の可能性をかっているんだ。」
この答えが分かれば、僕は君の情報を売るのをやめてあげてもいい。
うざ男はそう、あたしにささやきかけてきた。
この男は、あたしの可能性をかっている。
あたしも、並大抵の能力では潜り抜けられないであろうボンゴレのセキュリティーを潜り抜けたという、この男の能力はほしいと思う。
そうか。
そういうことか。
「あなたを、毎月安定した給料を払う事を条件に、あたし直属の情報屋に。」
「正解。その提案、飲んだ。」
安定して得られる金。
それが、収入が不安定な者が求めるものだ。
情報屋というのは、たとえ情報を探る実力があってもそれを買ってくれるところが無ければ収入を得ることはできない。
うざ男…情報屋、リヒトと言うらしいそいつは今までのうざい雰囲気はどこへやら、あたしの差し出した手を握った。
続く
NEXT→あとがき