風光明媚
□うざ男のうざさは並々ならぬものだった
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ぞわわわわわわ〜〜〜
両腕とかそんなレベルで収まりきらないくらい、全身余すところなく鳥肌が立った。
「嘘でしょ・・・。」
思わずつぶやく。
あたしの家のポストには、大量の封筒に入れられた(おそらく)手紙が押し込められていた。
差出人・・・《君だけのために存在する僕》
最終的に誰なんだとは内心突っ込んだが、こんなことをしそうな奴をあたしは一人しか知らない。
それは、獄寺にビビって竹寿司の営業妨害を止めたはずの、名前なんて知らない知ろうとも思わないうざ男。
取りあえず、ポストに押し込められた手紙をすべて回収し、自分の家まで持って上がって速やかにゴミ袋に押し込んだ。
ゴミ袋の2分の1が手紙で埋まった。
家に置いておくのも嫌なので、各部屋に設置されているゴミもまとめて突っ込んでガムテープで出てこないようにガッチガチに固める。
そして、ゴミ捨て場に走り、指定の場所に投げ込む。
息を切らして、唇をかみしめる。
うざいなんてもう通り過ぎて、気持ち悪かった。
ゴミ捨て場の前にしゃがみこんだ。
「何やってんだよ。」
聞きなれた声。
「ゴミ捨てに来ただけだけど・・・。」
顔を上げずに答える。
つい先日恋人のふりをしてもらった、獄寺。学校帰りだろう。着崩した制服を身にまとっていた。
「ゴミ捨てに来ただけ、の割には顔色白いぞ。」
「・・・別に、何も無いよ。」
必死で演技して、口ではないとはいえただのお隣さんにキスされて(キスが挨拶の国出身なのでなんとも思ってないかもしれないが)、そこまでして追い返したうざ男が今度はストーカーまがいの行動をしてきた、と言えば獄寺はどういう反応をするだろうか。
解決策を探してくれるだろうか。
それとも、自分で何とかしろ、と言われていしまうのだろうか。
後者の対応を取られるのが当たり前、だと思う。世の中そんなに甘くない。
おそらく戸籍が無いであろうあたしは、警察に駆け込むこともできない。
なんだかすごく現実を直視した気がした。
「ほんとになんでもないから、さ。」
あたしは獄寺の顔を見ることなくその場から逃げるようにマンションに駆け込み、階段を駆け上がった。
続く