風光明媚

□真逆の二人
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「やあやあハニー、今日も美しいねぇ!君の美しさにはそこのショーウィンドウに入ってる魚や貝、果ては卵焼きまで見惚れているだろう!!」


ほめ方にセンスを感じない。
まずハニ―じゃないし、もうすでに切り身になってショーウィンドウに陳列されている魚に見とれられても嬉しくないし、卵焼きに至っては焼かれてるし。


ツッコミは入れない。

深呼吸をして、満面の笑みを浮かべながら毎日言ってることを今日も言う。


「毎回言いますけどハニ―じゃないです。嫁でも妻でも女房でもないです。いい加減覚えてください。」



「照れ屋さんだなぁ!」



「・・・あのですね。」


よし、このうっざい会話も今日この日この瞬間までだ。



「今まで黙ってましたがあたしにはあなたとは格が違う、超素敵な彼が居るんです。だからあきらめてください。ね・・・ご・・・っほん、隼人?」




獄寺はカウンターの隅の席から立ち上がり、うざ男(本名なんて覚えてない)に歩み寄った。


「てめーがユズキに毎日毎日言い寄ってる奴か・・・。」


うざ男はガラの悪い獄寺に驚く様子もなく、口元に笑みを浮かべながら

「そうだよ。」

堂々と肯定した。


「僕は彼女に恋をしている。だから彼女にその気持ちを伝えているだけだ。それのどこに問題があるんだい?」

「口説かれてる本人が嫌がってるんだからそれが問題だろうよ。」

「!?なんだって??」


・・・うそ、気づいてなかったの!?

うざ男は驚いた様子を見せたが、すぐに納得したようにうなずいた。




「そんなわけないだろう!彼女は僕にいつも笑顔であいさつしてくれるんだよ?嫌ってない証拠だろう。」



そしてまだ言うか。
あんた、営業スマイルって言葉知らないでしょう。



「その笑顔が本物だって証拠があんのか?」

獄寺はすごい。私の思ったことを代弁してくれる。

「僕の視力は3.5だ!」


目がいいからって、嘘かほんとか見分けられるわけじゃないでしょうに。

獄寺がいらついて拳を固めている。



・・・一刻も早く殴りたいだろうな。あたしもだ。


でも。

「殴っちゃだめだよ、ご・・・っほん、隼人。」


何回間違えそうになるんだろう。
そりゃ、お互い名前呼びしてたらカップルらしく見えるだろうけど。

これだったらまだ獄寺って呼ぶ方が良かったかも知れない。


「・・・はぁ。分かってるっつの。」

ため息の中に、獄寺の
「てめーいい加減に人の名前ぐらいキチンと呼べ俺の名前がゴッホン隼人みてーになってんじゃねーか」
という呟きが混じった気がした。



・・・ごめんよ獄寺。
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