風光明媚
□偽彼氏
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…ほんとに来た。
「やあやあ、今日もいい天気だねぇマイスウィートハニ―!」
…空、あたしの心みたくどんより曇ってますけど。
っていうか誰がスウィートハニ―だよ。
頭の中を高速で駆け巡った突っ込みが口から出ることはない。
曲がりなりにもこの人はバイト先の客だ。
「今日は曇ってますよ。」
「またまた…照れてついつい僕に冷たく当たってしまうハニ―もかわいいよ!」
「すみません、ハニ―じゃありませんから。」
「ああ、そうだったね。そういえばまだ婚姻届を出してないなぁ。」
あたし=妻の公式が成り立ってしまっているこの男の頭を、手に持っているビール瓶でかち割りたい衝動に駆られるも、必死にこらえた。
「あなたとは結婚できません。無理です。だいたいあたしの好みは…。」
そこまで言って、あたしの言葉は止まる。
好み…うーん…。
目の前のうざい男の特徴。
顔はすごくいい。
柔らかい雰囲気。
少したれ目で、金色の髪。
身長はそこそこで、細身。
見た目はほんとにいい人。
でも、中身は自己中心的考え方で人の話しなんてまるで聞いてない、自分勝手な人だ。
そうだ。
「あたしの好みは釣り目で雰囲気がワイルドで、でもほんとは優しくてあたしの話をちゃんと聞いてくれる人です!」
あたしは口から出まかせで、男と真逆のタイプを口にした。
どうだ、ここまで真逆だったらあきらめがつくでしょうよ!!
しかし。
目の前の男は、あたしの想像を超えていた。
「僕の目の造りや雰囲気何かは違うが、残りは全部君のタイプに当てはまっている!
またそっけない態度を取って…君はどれだけ恥ずかしがり屋さんなんだ?」