風光明媚
□ちょっと待て。
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「…親父さん、あの人は何者なんですか?」
「客のプライベートにはなるべく踏み込まないようにしてるんだ。知り合いや向こうからしゃべってきた場合は別だけどな。」
「つまり知らないんですね…。」
何であたしは身分も名前も知らないようなやつと結婚しなきゃならないんだ。
というか毎日ここに来るって…あたしはともかく親父さんの迷惑になる。
「親父さん、あたしはどうしたらいいんでしょうか…。」
「ひとつ、いい方法がある。」
親父さんは満面の笑みでそう言った。
「なんですか?」
ほんと、わらにもすがる思い。
「武と付き合っちまえばいいんだ。」
思わず洗ってた皿を落としそうになった。
「親父さん!」
あたしの顔がカッと熱くなる。
「はははは!冗談だ。まぁ、武なんかに恋人のふりをしてくれって頼むのが一番だとは思うがな。」
「…そうしてみます。」
冗談の後にくれたすごいありがたい助言。
武君が帰ってきたら頼んでみよう。