風光明媚
□ちょっと待て。
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「あ…え…えーっと…すみませんが…あの…。」
ちょっとその手を離してください。
仕事ができません。
あたしは目の前の男にそう言いたくなるのを抑え、ひきつった笑みを浮かべるに留まった。
「君はなんてすばらしい女性なんだ!君こそが僕の妻となるべき人だ!」
「は…?冗談はやめてください。それと、今は仕事中なので…。」
かれこれ10分ほどがっちり掴まれている手は軽く引っ張るくらいじゃ離れない。
「客の要望にこたえるのも仕事のうちだろう?僕と結婚してくれ!」
「いや、いくらお客様の要望でも結婚ってのは私の意思としてですね…。」
「ふ…そうか。ならばいい。」
やった、あきらめてくれた。
あたしは心の中でガッツポーズ。
だけど、次の言葉でフリーズしてしまった。
「君が僕と結婚してくれる気になるまで僕は毎日ここに通い続けるよ!」
ちょっと待て―――!!!!
そんな気になるわけないじゃん!!