鬼徹

□鬼灯の場合
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地上だと今日はバレンタインデー。はっきり言って毎年毎年めんどうだとは思うけど、チョコを配ることにした。だって女の子だもん…っていうのが建前で、付き合いもあるし職場での印象を上げといて損はないはずだしね…っていうのが本音ですが。

上手く仕事を詰めて、今日は休みもとれたし。材料のチョコレートは前回の地上視察のときに購入済みだ。食堂の一角を借りて、バレンタイン用のチョコを作る。まぁ溶かして固めるだけなんだけど。それでも朝からやっていても、やっぱり配りたい人、全員分作ったら、お昼休みの時間になっていた。

時間通りに食堂に流れてくる獄卒たちの中に、まず渡そうと思っていた上司を見つけた。


「鬼灯様!」
「あ、蕃茄さん。今日はお休みじゃありませんでした?」
「そーなんですけど…、鬼灯様は今日は何の日かご存知ですか?」
「今日…?2月14日ですよね…。あ、」
「わかりました?」
「バレンタインですね」
「正解です!良かったらどうぞ。…甘いもの大丈夫ですか?」
「私、結構甘味は好んで食べますよ」
「なら良かったです!って、まぁ溶かして固めただけですけどね」
「いや、こういうのは気持ちが大事なんですよ。ありがとうございます」

そのとき、何となく、いやホント何となくなんだけど、鬼灯様の表情が柔らかくなって、ドキッとする。やっぱこの人、イケメンだー!

「はい、あの、じゃあ、他の人にも配ってくるんで!午後も頑張ってください!ではー!」
「あ、蕃茄さ…」

そのせいで、なんだか照れ臭くなって、あたしは急いでその場を後にした。



その日の夜。

「上司の話の途中で立ち去るというのは、どういうことですか」
「すいません…」

説教があたしを待っていたという…。



鬼灯×バレンタイン
(チョコレートは…美味しかったですよ)
(…っ!!)

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