檸檬空

□06
1ページ/1ページ



オレ、黄瀬涼太は、自分で言うのもなんだけど、昔から要領が良くて、大抵のことがそれなり以上に出来て、ほとんどのことが思い通りだった。

勉強、運動、恋愛、…普通悩むはずのところで悩まずに、その代わりいつもオレに付きまとっていたのは、何をしても遣り甲斐を感じられない、喪失感にも似た何かだった。


そんなオレも中2のとき、青峰っちに、バスケに出会ってから変わり始めた。

越えられない壁があることが、こんなにも辛くて苦しくて、でもそれを乗り越えようと努力することが楽しくて、嬉しくて仕方がなかった。


帝光中のバスケ部に入り、青峰っちや、黒子っち、赤司っち、紫っち、緑間っち、桃っちたちとバスケをするのが本当に幸せだった。探していたものが見付かった気がしていた。


でも、気が付いたらそんな幸せもいつの間にか崩れ始めた。

帝光中が強くなればなるほど、幸せとかそーゆーものから遠ざかって、中3の全中の頃には、バスケを始める前のあの"何か"が、また胸の奥で渦巻いていた。


帝光中は全中三連覇を決めて、オレたちも"キセキの世代"と呼ばれた始めたが、まだ、満たされない。


季節は流れ、オレは海常高校に入学し、バスケ部に入った。

また、青峰っちに会ったときのような感情が欲しくて。手に入れたはずのものをバスケで取り戻したくて。


オレは、いつになったら、満たされるんだろうか?

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ