幸福論

■06
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いつもの八百屋が木村ん家だった、と言う衝撃に、木村は木村で別の衝撃を受けてたみたいだった。


「なんでお前ら2人で八百屋なんか来てんの?」


そりゃそっか。事情を知らなかったら、結構謎な光景だ。


「実はさ…」


「へー、意外と苦労してんだな」
「そーでもねーよ」
「まぁ慣れてるっちゃ慣れてるもんね」


なんだかんだ職業柄、うちも清志ん家も親がいないことはしょっちゅうあった。まぁこんな長い間ってゆーのは今までなかったけど。

だから、一通り家事は出来るし、困ったときは清志がいるし、で、今の状況は実は言うほど大変じゃなかったりする。


そう言ったが、木村は思ってた以上にイイ奴で、


「じゃあ親父に頼んでみる」


と言って、十分安く売ってくれている野菜を、更に安くしてくれた。


「え、ホントにいいの?」
「いいって。こんくらい。まぁなんかあれば言えよ。親父たちにも頼んどいたから」
「ありがとう」
「わりぃな」


そして、さっそく野菜を積めてもらったりしている間に、木村と清志はバスケの話で盛り上がってた。


「でさー、秀徳のバスケ部って…」
「そーいえば、あの大坪がいるらしいって…」
「まじまじ。バスケやるって…」
「流石秀徳だな…」


あのー、盛り上がってるとこ悪いんですけど、


「清志ー、卵売り切れちゃうよー」
「あ、そっか。じゃあな木村」
「おう、また来てくれよ」
「木村、ありがとう」
「じゃ明日な」


そして、無事に卵を買ってついでに安かった鶏肉を買った帰り道。


「まさか木村に会うとはなー」
「あいつ、だから中学のチームメイトに八百屋とか呼ばれてたんだな」
「あ、そーだったの?」
「おー、そーゆー意味じゃかなり有名だった。オレは勝手に八百屋にいそうな顔だからだと思ってたけど」
「どんな顔だよ。まぁ言いたいことわかるけど…」


だよなー、と清志は笑った。木村には悪いけどあたしもおもいっきり笑った。

家に着いて、


「思ったんだけど」
「ん?」
「夕飯、当番制にしねー?」
「え、いいけど」
「1人分て意外にめんどくさいよな」
「まぁ確かに」
「それに2日に1回で済むし」
「うん。だから、いいよって」
「うん」


頷きながら、勝手にあたしん家に野菜を運ぼうとする清志。


「やだ!うちに置いたらなんだかんだで清志やらない気がする!」
「はー?そんなことねーよ」
「清志ん家に置こうよ」
「えー、お前んちでいいじゃん」
「絶対やだ」
「ちっ」
「ほらー!やっぱそーなるの狙ってたでしょ」
「…ちょっとは」
「よし、清志ん家に置こう」


そう言って、清志ん家に今日買ったものを運んだ。


「なに食べよっか。あ、オムライスは?卵いっぱい買ったし」
「なまえのオムライス美味いよなー」
「…おだてても無駄だからね。手伝ってよ」
「はいはい」


そして、オムライスとサラダとスープを2人で作って2人で食べた。


「明日から交代で作る?」
「先に帰ってきた方で」
「同じ部活なんだから同時じゃん」
「いや、オレは自主練するし」
「どーしてもあたしにやらせたい訳ね…。そしたら、他のことは清志に全部やらせるよ?」
「あー…、もう、いっそさ、」
「うん」
「どっちかん家に一緒に住めば良くね?」
「う、……ん?」


あれ?そーいう話になります?

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