□だけどどうしてこうも虚しいのだろうね
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喫茶店のガラス越しに高校生だと思われる、制服を着た子たちが通りすぎる。高校生を見てると、あたしってフケたなぁって思う。キラキラした毎日を過ごしてた、あの頃が懐かしい。恋に恋をして、吸い込む空気が全て甘酸っぱくて。空が青かったりするだけで、胸がいっぱいになった。あんな時代があたしにもあったんだ。たった2、3年前のあたしは、あんなに輝いて見えていたのか。


「未だに、喫茶店でオレンジジュース頼むなんて名前は充分、若く見えてるよ」
「子供っぽいのはわかってるよ。そーじゃなくて」


目の前に座る男は変なとこ正直で困る。まぁ中二病こじらせてるあんたには、高校時代を懐かしむなんて出来ないでしょうね。全身、真っ黒な服って…。今、夏だよ…?


「俺は高校の時はろくな思い出がないからなぁ…」
「…その割りには随分楽しそーね」
「だってさ、名前、俺のこと好きだったんでしょ?」
「あーはいはい」


そんなこともありましたね。

なんで臨也が好きだったかなんて、思い出したくない。うん。きっと何かの間違いだ。


「ほら、恋に恋をしていましたから。誰でも良かったんでしょ。じゃなきゃ臨也なんて好きになんないって」
「えー。これでも、高校の頃は結構モテてたんだけどなー」
「知ってる。とりまきがすごかったもんね。女の子侍らしてさー」
「何?嫉妬?」
「誰がするか、バーカ」
「ひどいなー」
「…臨也はなんでこんなとこいるの?」
「仕事でさ近くまで来てて。名前は?」
「待ち合わせ。だからそろそろ帰りなよ」
「どうしよっかな」
「だって待ち合わせてんの、静雄だよ?」
「げ、シズちゃんだったの?」
「そーだよ」
「じゃあ、今度はシズちゃんのいないときに」
「うん」


ぶっちゃけ臨也なんて別に会わなくても良いと思っていたけど、やっぱり実際会ってみたら高校時代の色々を思い出して、少し、胸がキュッとなった。

後ろ姿を眺めながら飲んだオレンジジュースは氷が溶けて、味が薄かった。なんか寂しい。


今も、充分楽しいし、充実してる。それはわかってる。わかってるけど、



だけどどうしてこうも虚しいのだろうね

(静雄、早く来ないかな)




――――
たまに高校生に戻りたいと思う。


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