□蜂蜜みたいな甘さが苦痛
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どんっ、と背中に衝撃が走る。間髪入れずに、馬乗りになった鬼灯に両手が顔の横に縫い止められた。視界は鬼灯と天井だけで、冷えた床で身体がどんどん冷えていく。会ったとたんになんてことするんだ。

「どいてよ」
「嫌です」

会話みたいな短い言葉の投げ合いは冷たさをはらんでいた。

冷えきっていたのは、床や言葉だけではない。私たちの関係だって、とっくの昔に冷たかったじゃないか。だから、別に私は悪くない。悪くないって自分に言い聞かせる。

「白澤さんに会わないでくださいって言ったじゃないですか」
「もう関係ないでしょ」
「あります」
「ないっ、」

説明したくなくなったり自分に都合が悪くなったら、キスで誤魔化すのは鬼灯の悪いところだ。でも、そのキスで私の身体は再び熱を持つ。

それなのに、やっぱり鬼灯はいつものように、それ以上は何もしない。ただ、抱き締めるだけ。

ね、優しさはもう充分だから要らないってば。


蜂蜜みたいな甘さが苦痛


大切にされ過ぎて息苦しくなって、本当はもっと無理矢理でも求めて欲しくて。様々なことに聡い鬼灯は、私の気持ちに対してだけ疎い。

鬼灯の気持ちから逃げて、曖昧な関係にして、裏切って他の男と遊んだ私の何処がいいんだろう。なんで鬼灯がこんな女に固執するのかわからない。

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