鬼徹

□第九話
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「あ、そう言えば蕃茄さん」
「なんでしょうか鬼灯様」
「まだ桃源郷への案内が済んでませんでしたね」
「え?桃源郷?」
「はい。こないだの白澤ってやつ覚えてます?」
「あ、はい」


鬼灯様いわく、白澤さんに"不本意ながら"薬を作ってもらう等の仕事を頼むことがあり、その仕事場が桃源郷だという。鬼灯様の忙しいとき、白澤さんから薬を受け取ったりするために、その仕事場への行き方と従業員の方を教えておく、と言われた。


「わかりました」
「で、ここが桃源郷の白澤さんのお店です」
「おおーっ」


予想よりかっこいい外観に感嘆する。ドアを開けた先も薬草など薬の材料が天井から吊るされていたり、棚にところ狭しと並べられていて、かなり本格的だ。


「あ、鬼灯さんいらっしゃい」
「で、彼が従業員の1人、桃太郎さんです」
「え?桃太郎って、もーもたろさんももたろさん お腰につけたキビダンゴ1つわたしにくださいな、の桃太郎ですか?」
「はい。やーりませんやりません そんなにダンゴが欲しいならオレの屍越えていけ、の桃太郎です」

昔読んだ現世の物語の歌を歌うと、鬼灯様が2番を歌う。しかし、鬼灯様の無理矢理な替え歌に"本物"は、


「違います!やーりましょうやりましょう これから鬼の征伐に着いて行くならやりましょう、の桃太郎です!」


と、正しい2番を歌った。それにしても…


「…どっちにしろ物騒ですね」
「私たちは鬼、征伐される側ですからね」
「…ところで鬼灯さん、この子だれなんですか?」
「私の部下の蕃茄さんです」
「あ、はじめまして。閻魔大王第一補佐官補佐役で鬼の蕃茄です」
「通称雑用係です」
「それ言ってるの鬼灯様だけですって…」
「私が忙しいときは蕃茄さんに頼むので、対応してあげてください」
「よろしくお願いします」
「わかりました。白澤様にも伝えておきますね」


ちょうど桃太郎さんがそう言った時、ドアが開いて白澤さんが入ってきた。


「あー蕃茄ちゃん!来てくれたの?って鬼灯もいるよ…。今日は何もないだろ?帰れよ」
「今後の為に桃太郎さんと顔合わせしただけです。言われなくても帰ります」


出会い頭に2人はにらみ合い、険悪なムードだ。本当に仲悪いな。


「行きましょう蕃茄さん」
「蕃茄ちゃんは残っていいのにー」
「白澤さんすみません、仕事がまだあるんで…また今度来ますね」
「うん。いつでも来ていいからね」
「それじゃあ桃太郎さん、これからよろしくお願いします」
「こちらこそお願いします」





"桃太郎"の続き→鬼と仲良くなってました

(なんか桃太郎さんとは変な上司がいるもの同士仲良くなれそう…)

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