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□守ってあげるから。
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朝起きると、外は雨だった。
あまりに暗いから、もしかしてまた目が覚めてしまったのかと思ったほどだ。
結局昨夜はあまり眠れなかった。
嫌な寒気のせいで何度も起きた。
寝ては起きて、寝ては起きて、の繰り返し。
ぼやけた頭を振って、外を覗き見た。

窓に叩きつけるような雨。
この教団本部は無駄に高い位置にあるから風が強い。

「(まぁそれでも俺は鍛錬しに行くけど)」

どうせ雨で団服は濡れるだろうと思い、白いシャツに黒いズボンという格好で部屋から出た。
ついでに朝食も摂ってしまおう。
それも見越して六幻は部屋に置いてきた。

・・・無防備だろうか。
よくよく考えればそうだ。

「(食事中にアクマが攻め込んで来るかも・・・。)」

若干考えすぎかとも思ったが、あのモヤシが入団して来た時以来、あながち間違った判断ではないだろう。(結局奴はアクマではなかったが。)
食堂に向かいかけた足を止め、部屋へ戻ろうと、廊下を戻り始めた。

そういえば髪も結んでいなかった。
昨夜眠れなかったせいか、うなる雨音のせいか、何だか少しぼんやりしている。

「(突然任務が入るかもしれないのに・・・)」

自己嫌悪して(まぁ、意図的に眠れなかったり、雨音を気にしているわけではないのだが)、ため息をついた。

その時。

ようやく気付いた。
足元に、血痕。
何だ・・・?
何の血だ・・・?
教団は相変わらず騒々しいが、アクマが攻め込んできたような様子は無い。
と言うことは、アクマの血ではない。
それにこの真っ赤な血はアクマのものとは違うだろう。

「(またファインダーでも死んだか・・・)」

しかしそうでもないらしい。
何度も言うようだが、騒々しいが誰かが死んだような重苦しい空気でもない。

「(何なんだ・・・。)」

とりあえず考えていても仕方が無いし、興味も無い。
再び自分の部屋へと足を向けた。

「(・・・?)」

廊下を這いずったような血の跡は、俺の進む先へしつこく続いていた。
嫌な気分だ。
気色が悪い。
その時団員が二人、書類を持って横を通り過ぎた。

「おい。」

声をかけると、二人の団員は俺を振り返った。
あからさまに嫌な顔をされる。
まぁそうだろう。
何と言っても、俺は"冷徹人間"で、"人情のかけらも無い"のだから。

「この血の跡拭いとけ。
気色悪いんだよ。」

そう言うと、団員は顔を合わせた。

「はーい。」

返事をすると、二人はすぐさま歩き出した。
そしてしかめっ面で話し始めた。

「聞いたか?気色悪いだってよ!」

「同じ仲間の血なのになぁ!」

お前らのひそひそ話は丸聞こえだぞ。
別に今更どう言おうとも思っていないが。

・・・待てよ、今"同じ仲間の"って言わなかったか?
昨夜のぞくりとした寒気が、また背中に走った。
立ち止まって、その丸聞こえのひそひそ話の続きを聞いた。

「ほんとに冷徹だよな、神田は!」

「まったくだ。何つったってあの血は・・・」


ラビの血なのにさ。


「ラビ・・・―――?」
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