魂と共に
□序章
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「貴様、なんのつもりだ!?」
声を張り上げて怒鳴るのは、赤い髪の青年。
その青年を嘲笑うのは、銀髪の男。
静かな、何もない場所で二人は向き合っている。
「…オレを殺すのか? 世界が… 「殺しはしない。」
落ち着きを取り戻したらしい青年の言葉を遮って、男が低くそう言った。
「なんだと?」
意味が分からない、そんな表情で聞き返す青年の言葉を無視して、男は青年に切っ先を向ける。
「結局戦うんじゃねーか」
舌打ちをして、青年も武器を手に取った。
* * *
青年は防御を専門とするらしく、攻撃力はないに等しい。
そのような者が一騎打ちをすれば、結果など目に見えている。
青年は怒涛の抵抗を見せたものの、男に捕らえられた。
青年が負けた瞬間、どこなのか分からない暗闇に投げられる。
「ワリィ、捕まっちまった…」
青年は瞼を閉じて、虚無に向かって呟き、そこに手を翳(かざ)す。
「 」
そして音にならない言葉を紡ぎながら、意識を手放した。
〔序章〕終