主。

□第三章
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桜の予想通り、「さえのへや」とかかれたプレートのかかった部屋の前に止まった。
そしてノックをして、

「さえ、入るよ」
と、今までとは打って変わって優しい声で、部屋に声をかけた。

そのギャップに驚いていると、中から
「さいがお兄ちゃんだ!」
とかわいらしい声がした。

…お兄ちゃん?
兄妹?


疑問符が頭を駆け巡っている間にドアが開き、小さな女の子がさいがの首筋に手をまわして、抱きついていた。

ジャンプ力すごッ!


桜は運動神経がいい訳ではないので、素直に感心した。
自分の身長の2倍くらいの人間に飛びつくなんて出来る訳ない。



「あれ?今日はお目々に何かしてるの?どうしたの?怪我でもしたの?」

床に下ろされた少女がとても不安げに問う。



あ、いつも眼帯な訳じゃないんだ。
じゃあ聞いてもよかったかも、とか思っていると、

「ん?今日はね、あの子にここを紹介してあげるから、さえにも手伝ってほしいんだ。手伝ってくれる?」

と、巧妙でもないけど話を逸らした。
それでいいのか!?と思ったけど、少女は桜以上に頭が軽かった(いや見た目通りと言うべきか)らしく、

「うん!いいよ!!
 さえ、お手伝いする!」
嬉々とした表情でこちらを見た。
「あのお姉ちゃん?」


ビシッと指を差されたが、まあ小さな子供だから桜も気にしない。

「はじめまして。佐久間桜です」
しゃがんで、目線を合わせるようにして挨拶した。
桜は結構小さな子が好きだった。

「はじめまして!
 せきさえです!よろしくおねがいします!」
と礼儀正しく、でも元気はつらつと挨拶を返してくれた。
いい子だなぁ、と思う。

近づいて、頭でも撫でようかそれとも握手しようかかわいいなーぷにぷにしてるなー
とか思いながらにじり寄っていくと、

「さわっちゃいや」
といってさいがの後ろに隠れたのだった。


「え…?」
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