踏み出す世界は
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カラクサタウンとサンヨウシティを結ぶ2番道路。
肩にロージャを乗せて歩いていると、不意に腕のライブキャスターが鳴った。
「…?あれ、ママ?」
「そうよー。やっと追いついた!」
「え?」
ライブキャスターで会話しているはずなのに声がすぐ後ろからも聞こえて、一瞬だけギョッとした。
慌てて振り向けば、そこにはライブキャスターの画面に映っている人物…ママがいた。
「ママ!?え、なんでここに居るのさ!?」
「…もうここまで来たのね。早いわねー、トウヤ」
「俺の質問に答えてよね!?」
ああもう何でこの人はこんなにゴーイングマイウェイなんだろう。
ロージャが少しだけ驚いてる。まぁ、この人の前だと俺も少しペースが乱されるからなぁ…。
「で、本当にどうしたのさママ。こんなところまで追いかけてきて」
「『おそらく今ごろはサンヨウシティにむかってます』ってアララギ博士に聞いてね」
「うん、俺の話を聞いてるのかな?」
「でね、部屋を片付けてたらこんなのがでてきたから!はい、ママからトウヤにプレゼント!」
手渡されたのは、少し大きめの箱。なんだこれ、こんなの俺の部屋にあったかな?
開けてみると、そこに入っていたのは一足のシューズ。これって確か…。
「ランニングシューズ?」
「…買ったまましまっておいたのをかたづけをしてみつけたの。…たまにはかたづけもするものね」
「俺の部屋にしまってたの?てか買ったの何時さ、サイズ合ってる?」
「文句を言うなら、まずは履いてみなさいよ」
「って、ここ道端…」
ロージャを肩から降ろして、とりあえずシューズを履き替えてみた。サイズはまぁピッタリといえばピッタリで、使い方さえ慣れれば問題なさそうだ。
…いつ買っておいたんだろう。というかしまっておくなら姉さんの部屋にして欲しい。今あの人いないんだから…。
「そうそう、トウヤが旅に出たこと、トウコにも教えておいたから」
「え、えぇ!?なんで!?」
「だってトウヤ、あなたはひとりっきりだと加減しないんだもの」
困った性格よねぇ、それがいいところでもあるんだけど。とママはため息混じりに言った。…そのことは自分でも自覚してますよ…。
ああでも、とママが手を叩いた。ニッコリと笑って、俺の肩によじ登るロージャを見た。
「あなたは一人じゃないわね。いつもポケモンと一緒だし、友達もいるから安心ね。それに…」
「それに?」
「ママだっていつもあなたのことを想っているから」
背中に腕が回されて、ママに抱きしめられる。待って待ってここ道のど真ん中。ああ短パン小僧くんの視線が痛い…!!
逃れようともがくが、相手が相手だし本気で突き飛ばせない。どうしようと焦っていると、わりとあっさりと解放された。
ママはニッコリと笑い、俺の頬に軽くキスをして、
「それじゃあ旅を楽しんでね!」
そう言って、元来た道を帰っていってしまった。
ポカンと立ち尽くす俺の頬を、ロージャがぺちぺちと叩く。
…15にもなってママにキスされるとか思ってなかった…。
「…うん、行こうか」
ぐい、と帽子の鍔を深くかぶり直して、とりあえずは一部始終を見ていた短パン小僧をぶっ飛ばしにかかった。
【踏み出す世界は】
トウヤ 現在の手持ち
ロージャ/ツタージャ ♂ まじめ 見栄っ張り
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