剣は誰が為に

□ある日の夢の話
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その日、私たちの学校は学園祭で。
デザイン系の専門学校に通う私たちにとって、学園祭は数少ない発表の場。
みんな意気込んでいて、もちろん私たちも例外じゃなくて。
前日ギリギリまで準備して、疲労とテンションのメーターはもう振り切っている。

だからなのか、普段なら「下らない」と切り捨ててしまうようなことで笑い合っていた。
私の隣に立つ、淡い茶色の髪の男の子も、だ。
何事かを私に耳打ちし、その内容に私は吹き出した。楽しくて楽しくて、仕方がない。

ふと、彼が私の手首に光るブレスレットに目を止めた。
複雑に絡む細い二本のチェーンと、赤い蜻蛉玉が光るシンプルなブレスレット。
綺麗だな、と彼が笑った。
それに答えようと笑いかけて―私は気付く。

いつの間にか回りは真っ暗で、賑やかで楽しい学園祭の景色はどこにもない。
すぐ隣にいた彼さえいなくて、私はパニックになって走り出す。

でも、闇は深く、果てなどなく……私はついにその場に泣き崩れた。


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