剣は誰が為に

□気紛れ逢瀬
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サンカ、と呼ばれる一族に俺は生まれた。

山に住み、定住の地を持たずに彷徨う一族。その中でも、俺は明らかに異質だった。
人ならざる力。それは俗に、“魔物”と呼ばれるものの類の力。
父も母も、一族のものすべてが俺を畏れた。
だからだろう。俺は自分から一族から離れた。
無理して自分に微笑みかける両親に、心が痛んだからなのか。それとも周囲の視線が煩わしかったからなのか。
……おそらくは、両方か。

たったひとり、山を彷徨い歩いた。身に宿した力を忌み嫌いつつも、それで身を守りながら。

その地に流れ着いたのは、偶然だった。

その娘に会ったのも、偶然だったはず。

今では、もうわからないことではあるが。


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