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□変わる未来絵図
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香に会ってから、リョウは変わった。それは例えば、人と馴れ合うようになったり、すぐに急所を狙わなくなったり。過保護じゃないけど、香を守らなくては、という使命感だったり。
恋愛感情じゃない。でも傍にいないと不安になる。そうやって自分に嘘をついてきた。槇村の代わりと言って、裏の世界に引っ張り込んで、公私混同させているのは俺だ。預かり物だから守るなんて言い訳、通用しないことくらい分かっている。それに、奥多摩でのこともあった。今さら香を捨てるなんて、リョウにはできない。
「なに真面目くさった顔してんのよ」
「ちょっと考え事してるだけさ」
「リョウが考え事ね。明日は雪かしら」
「うるせえ」
冗談よ、と明るく笑いながら、香はリョウの隣に座った。暖房が効いていない寒い部屋だったとは思ってなかったらしく、香は身震いした。リョウは香を抱き寄せてやる。
そうだ、ずっと考えていた。あの頃から変わっていない思いは、ただひとつ。
「お前は、俺のパートナーでいいのか?」
「…いきなり何」
「いつも考えてたさ。でも言えなかった」
「またパートナー失格?」
「何言い出すんだよ、そんな顔しちゃってさ」
リョウは困ったように笑いながら、リョウの腕の中にいる、今にも泣きそうな香の頭を撫でた。
「俺は香ちゃんがいないとやってけないわけ。だから逆に怖いのさ。裏しか知らない俺は生き抜くしかないけど、お前にはもともとの生活がある。その、なんだ、普通に恋愛もしたかっただろうし」
「リョウに恋してるじゃない」
「わお、香ちゃん大胆ね!僕もっこりしちゃう」
「ムードを考えろ、このスケベ!」
リョウがいつものペースにしてやると、香も元気にハンマーをお見舞いしてくれた。今日はハンマーも有り難いと思っておく。
「リョウが必要としてくれてるなら、わたしはここにいる」
香はリョウの目を見て、はっきりと言った。リョウは少し驚いてから、目を逸らした。まっすぐ見つめられるのが妙に恥ずかしくて、がしがしと頭を掻いた。
「お前はいい女だよ。調子狂っちまう」
「それって本心?」
「もちろん!リョウちゃん嘘つかない」
今度は、リョウが真面目な顔で香を見る。香はうろたえた。その漆黒の目に吸い込まれそうになる。
「一回しか言わないから、よく聞いとけ」
「なに?」
「愛してるんだ、香のことを」
「…うん」
「俺の恋人になってくれるか」
香は小さく頷いた。耳まで真っ赤な香の額に優しくキスをする。すると、香がリョウをきつく抱きしめた。いろんな感情が混ざって、ひたすら胸が苦しい。
「今までで一番嬉しいかも」
「そりゃあ光栄だ」
「…リョウ、だいすき」
お互い上手くいくなんて思っていない。危険が付き纏うのは仕方ない。でも、今の香の一言で何とかなりそうな気がした。
「さて、酒でも飲むかな」
「祝杯ですか?」
「そんなところです」
二人の夜は始まったばかりだ。