main
□君が握りしめたのは赤いストック
1ページ/1ページ
「俺だって悩むときくらいあるんだよ、香ちゃんは静かにしてなさい」
「馬鹿にすんな!でも、ご飯冷めちゃうじゃない」
「リョウちゃん、それどころじゃねえもん」
「そのアホ面でよく言うわ」
勝手にしろと、ハンマーをお見舞いしてキッチンに向かう。いつもそう。想いが通じ合ったのに、こればっかりは直らない。パートナーの私の身にもなれっての!
「そ、そんなに怒るなよ」
怒ってないもん。ちょっと悔しいだけだもん。
「香ちゃん、拗ねちまったのかな?なあ、おい」
拗ねてなんかない。私に魅力がないのは重々承知。
「…香」
「お前、だからな」
「俺が愛してるのは」
「だから、その、こっち向いてくれよ」
後ろから抱きすくめられて、ああ、やっぱり勝てないと思った。変態で面倒臭がりでデリカシーもないのに、平気で格好いいこと言うし、たまに照れるし。私は振り回されてばかりだ。悔しい。
「…私のこと、好きじゃないでしょ」
「俺を信じろよ」
いつも最後は甘い響き。
***
「はい、よくできました」
「ごめんなさいは?」
「香ちゃん、ごめんね。リョウちゃん、やめられそうにないの」
「ふざけんな、もっこり野郎!」