ラブこめ*

□好きです先輩!
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「柚香」

『沖田先輩っ』

先輩と私が付き合いはじめてから4ヵ月。先輩は、暇さえあればいつでもキスして
くる。

『すいません・・・待たせてしまって・・・』

「僕も今来たとこだし大丈夫だよ」



ーーーだけど

ある日をさかいに、きっぱりキスしてこなくなった。その日からもう3週間近く経
っている。
人前でいきなりされるのは恥ずかしいけれど

「じゃ、行こうか」

ーーーキス自体は嫌じゃない

『はい!』

***************


赤、青、黄・・・色とりどりの魚たちがガラスごしに繰り広げる舞い。


『綺麗・・・・』

「そうだね・・・・あ。あの魚、土方先生に似てる」

『え!?どこですか!?・・・ほんとだ・・・・言われてみれば・・』


それからたわいもない話をして、カフェでケーキを食べたりしているうちに時間
は過ぎ、危ないからと先輩が家までおくってくれた。


やっぱり今日も・・・
先輩はこんな愛想がない私に飽きてしまったのだろうか?他に好きな人ができたか
らだろうか?

そんな事を考えているうちに、家に着いていた。

『今日はありがとうございました!とっても楽しかったです』

「良かった。じゃあ、また明日ね」

そう言った後、先輩は何か言おうとしてやめた。

「・・?」

先輩は何を言おうとしていたの?

それは。もしかしてーーー


ーーー嫌

考えたく ない


私は家の中で一人、うずくまっていた。


***************


次の日、考え事をして睡眠をあまり取れなかったせいで授業は上の空。

授業も終わり、先輩と二人きりの帰り道。いつもは1日の中で一番の楽しみだっ
たのに、今日はとても長く感じる。私の気持ちを察してか、先輩も何も言わない


「柚香、」


やめて

言わないで

聞きたくない


「別れよう」


私はうつむいたまま頷くことしかできなかった。
ここで嫌と言っても、もっと嫌われてしまうだけ。それなら潔く諦めたほうがい
い。そう私は判断した。
先輩の足音が遠くなっていく中、私は1人、道で立ち尽くす。
気がつくと、自分の瞳から水滴が落ちてい
てーーー・・・その水滴は止めようとすればするほど、どんどん溢れ出てきた。
アスファルトが濡れていき、小さな水溜まりをつくる。




「どうして泣くの?」

いつのまにか近づいて来た足音は自分の目の前で止まっていた。

『・・・・悲しいから・・・です』

私はうつむいたまま答えた。

「僕の事、嫌いなんじゃ・・・ーーー」

『そっ・・・そんなことないです!!!』

「本当に?」

『本当です』

先輩を真っ直ぐ見て答えると、そっと抱き締められた。心臓の鼓動が一層速くな
る。

「ごめんね。君に嫌われたかと思ったから」

『・・・え?・・・ーー』

「最近、僕の事避けてたでしょ?」

『そ、それは・・・先輩が人前でキスしようとするから・・・・』

「駄目?」

『だっ・・駄目です!!・・・』

「どうして?」

『・・・・・・・・・恥ずかしいからです・・・・』

「キスするの、嫌?」

『えっ』

「嫌?」

先輩は真剣な表情で私を見つめている。目を逸らそうとしてもできなくて・・・

『・・・・・嫌じゃないです・・』

「今日はそれで許してあげる」

どういう事かと聞こうとした時には、私の唇は先輩の唇で塞がれていた。

「ちゃんと思いを伝えてくれないと、キスしてあげないからね」

先輩は意地悪な笑みをうかべて言った。

『ッ!?』

その日から、毎日一回は好きと言わなければならないというきまりができた。








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