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□なかなか押せない送信ボタン
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なんでじゃ。

神様は不公平。
なんでなんでなんで。



「なんでじゃ…!」

「んだよ仁王」

「なんでブンちゃんが倉橋さんの隣なんじゃ!」


‘15’とかかれた紙をひらひらと揺らす目の前の丸井。いや、丸いブタ。

本気で羨ましい。
いや、15という数字が羨ましいとかではなく。席替え真っ只中の今その数字が示しているその席が、だ。

15の示す席は廊下側の列前から二番目。もちろんこのポジションが羨ましいわけでもない。


倉橋さんの隣、というポジションが羨ましいんじゃ。




「ああぁ死ねブタ」

「おま、失礼だろぃ」

「なんでブンちゃんが倉橋さんの隣なんじゃ…俺のがその席座りたいナリ。不公平じゃー…」

「そんなんくじ引き恨めよ」



それはまぁごもっともじゃが。

そしてまた最悪なことに俺の席は窓側の列真ん中24番。15番とは正反対。
しかもこれから暑くなるから直射日光が差しこむ。

正反対で太陽からダイレクトアタックまで受ける席って、なんかしたんか俺。最悪。


「つーか、俺んとこくる口実で話しかけりゃいーじゃん」

「そんなん恥ずかしくて話しかけられん!」

「…よくそんなんで隣なりたいなんて言えたなお前。おー、倉橋」

「っ!」

「隣よろしくね、丸井くん」


そこに現れたのは倉橋さん。噂をすればなんとやら、じゃ。まあ席替えてるからこっちくるのは当たり前じゃがの。


てゆうか、やばい。
可愛い。

さっき少し香った倉橋さんのシャンプーの匂いだけで心臓ばっくばくじゃ。話しかけるなんて無理無理。


「な、倉橋。仁王が話しあるって」

「な、」

「ん?どしたの仁王くん」


(なにを言い出すかと思えば…!)



ブンちゃんを見やると頑張れよぃ、とでも言いたげな顔でガムを噛んどる。
このブタ…いや、チャンスじゃ。
話しかけるんじゃ!


「あ、う」

「……?」

「め、メアド教えてくれんか?」



しまった、直球すぎた。と一瞬にして思った。
ブンちゃんははっきりとあきれた表情でもうチョコを食べることにシフトした。

あー、終わった。
さようならまーくん、今日まで片想い頑張ったナリ。




「あ、うん。全然いいよ!」

「…え」


まさかの快諾。

ふわ、と笑った倉橋さんが可愛すぎて嬉しすぎて心臓止まるかと思った。


にしてもたまにはブンちゃんも役にたつんじゃな。後でチロルでも奢ろう。

その後窓側真ん中の席には、にやにやしながら二時間近くかけてメールを作成する俺がいた。




なかなか押せない送信ボタン

(ぶ、ブンちゃん…なんて送ればいいんじゃ!)
(んなの好きでいいんじゃね?)
(ああぁ無理じゃあ!)



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