Rank.D 異能を持つ学生達

□第一章第二節 R4
3ページ/18ページ

第一試合が終わり、リングの整備が整うと、実況のアナウンスが再び会場に響き渡る。


「続きまして、次鋒戦、三神 涼介選手 対 大倉 岳選手!」


すると、大人と子供程の体格差のある二人がリングに上がる。


「よろしくお願いします。」


にこやかに手を差し伸べる涼介。


「おう、よろしくな。」


岳もその手を楽しそうな笑みを浮かべながら握り返す。


カーンッ!


握手を終え、お互いの立ち位置に戻った二人が構えると、ゴングの音が響き渡る。


「では、行きます!ブロウウィンド!」


そして、先制を取ったのは涼介、霧夜とは真逆の口頭詠唱で強烈な烈風を岳に放つ。


「動かざる事…山の如し!」


が、その烈風に対してドッシリと構えた岳は一瞬、緑色のオーラのようなものを纏う。


ドォンッ!


「おぉーっと!三神選手の初撃が打ち消されたぁ!」


そして、涼介の烈風は岳のオーラによって簡単に相殺された。


「ワシの能力に、ヌシの能力は効かん!」


試合開始直後と変わらずの体勢で言い放つ岳。


「みたいですね。ならこれはどうでしょうか?ソニックムーブ!」


一撃で相手を沈めるつもりだった涼介も、岳にそれを簡単に打ち消されたのは想定外だったのか、少し苦笑を浮かべながら次の技を発動する。
すると、涼介は不可視の速度で移動を始め、聞こえるのは方向転換をする際に聞こえる僅かな足音だけだった。


「速いな…だが。」


「もらった!」


相手の隙を突き、岳の背後に現れた涼介だったが、


「疾き事…雷霆の如く。」


岳は黄色のオーラを纏うと、その巨躯からは想像も出来ないスピードで、涼介の背後に一瞬で回り込み、頭を掴むと容赦無く、その整った顔立ちを力一杯床に叩きつける。


「かはっ…!?」


たまらず吐血し、鼻血を流す涼介。
それと同時に、ファンの女子からは悲鳴に似た怒号が飛ぶ。


「りょーすけが珍しく苦戦してんじゃん。」


涼介と岳の試合に少し興味を持ったのか、暁月が身体を起こしその様子を眺める。


「音速が光速に勝てるなどあり得ない。」


岳は脳震盪で身動きの取れない涼介の頭を鷲掴みすると、空中に放り投げる。


「侵略する事…火の如く!」


そして、今度は赤いオーラを身に纏うと、右拳で涼介の腹部を全力で打ち抜く。
すると、全身に纏っていた赤いオーラが右拳へと集中し、それは涼介の全身から炎となって噴き出す。


「がっ…!?」


再び宙に打ち上げられた涼介は燃えながら激しく床に叩きつけられる。


「さっさと、消火してやれ。死ぬぞ。」


火だるまの涼介を見やり、背を向けながら岳が言うと、実行委員が慌てて消火器を持ってくる。


「どこにいくんすかぁ?まだ終わっちゃいねーですよ。」


岳の背後から、ゾッとするほどの殺気を纏った声が聞こえる。


「馬鹿な…その状態で立ち上...!?」


その声に振り返った岳は絶句する。
そこには、炎で身を焼かれながらも、不気味にケタケタと笑い続ける涼介が何事もなかったように立ち上がっていたからである。


「あちゃー…アネ様、涼介の奴、バーサク状態入っちゃいましたよ?」


凛音がやれやれと頭を押さえながら暁月に告げる。


「りんね、いざという時はよろしく。こうなったらアイツの勝ちは動かないから、終わったら起こせ、きりや。」


「了解だ…。」


そう言って気にする素振りすら見せず眠りにつく暁月に凛音は今日何度目か分からない溜め息をついた。


「覚悟できてんすかぁ?僕の顔に傷付けたんですから、あははっ!」


両手を大きく広げると同時に炎を四方八方へと吹き飛ばし、多少の火傷を負っているものの、先程までと同じ笑顔に、今度は狂気を携える涼介を見て、岳は少し後ずさる。


「静かなる事…林の如く。」


涼介を警戒し始めた岳は、黄緑色のオーラを纏うと、その姿は消え、気配も感知出来なくなる。


「無駄ですよ。」


涼介はニタァっと笑い、ガッと手を伸ばし、虚空を掴んだはずの手には、いつの間にか喉を掴まれた岳がいた。


「なっ…どうして…。」


「単純な事ですよ。風…つまり、空気は僕のテリトリー。姿を消そうが何をしようが、貴方の居場所は僕には筒抜けなんですよ。僕に、この完全把握領域を使わせたのは貴方が久しぶりです。」


変わらずケタケタと笑いながらも、拳を握る涼介。


「それを評して、この一撃で叩き潰してあげます。」


「ミキシングサイクロン。」


涼介が風を纏わせた拳を岳の腹部に打ち付ける。


「ゴファッ!」


すると、岳の腹部が大きく捻れ、大量に吐血し、吹き飛んだ。


「はい、おしまい。」


返り血を盛大に浴びた涼介だが、それを気にする事なく、ニコッと笑う。


カンカンカーンッ!


その残酷な様子に途中から観客は言葉を失っていた。


「でも、まだ足りないなぁ…。」


しかし、涼介は自陣に戻る途中で足を止め、観客を見回す。


「みぃーっけ。」


そう言って標的に定めたのは、輝だった。


「!?」


涼介の視線が自分に向けられていると気付いた輝は額に汗を滲ませる。


「涼介、お前の出番は終わりだ。」


だが、涼介が構えた瞬間、凛音に肩を掴まれる。


「ヤダなぁ、冗談ですよ。」


少し残念そうな笑顔を浮かべながら再び自陣に戻る涼介を見送った凛音は軽く安堵の溜息を漏らす。


「次、始めましょう?」


そして、放送席へと振り向き、実行委員を促す凛音だった。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ