Rank.D 異能を持つ学生達
□第一章第二節 R4
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「フレイムショット!」
開戦早々に杏子が掌を霧夜に向けると、炎の弾丸が放たれる。
「無駄だ…。」
霧夜はそれを軽やかに躱す。
「掛かった!フレイムピラー!」
杏子が叫ぶと、霧夜が着地した足元から火柱が噴き上がる。
「ヨシッ!」
軽くガッツポーズをする杏子だが、
「この程度の炎で俺の氷を溶かせると本気で思っているのか…?」
火柱の中から霧夜の声が聞こえたと思った途端、火柱が丸ごと氷漬けになる。
そして、それが砕かれ、中から無傷の霧夜が現れる。
「おぉーっと!あれだけ高温の炎を受けて、無傷だぁ!」
「まさか、あれがお前の全力じゃないよな…?」
「まさか。まだこれからよ!」
そんな杏子の言葉とは裏腹に、彼女は冷や汗を流した。
「とはいえ、完全にヒットしたはずなのに、身体に傷どころか、服に焦げ跡すら無いなんて…ショックだなぁ…。」
軽く肩を落としながら独り言ちる杏子。
「脳内詠唱であれ程の火柱を氷漬けになんて…やっぱりR4の次元は違うな。」
舞琴は観察をしながらも、霧夜の魔術師としてのスキルに感心する。
「にしても、お前の姉貴がR4のメンバーだったとはね。」
「何で隠してたのよ。」
「別に、聞かれなかったから言わなかっただけだ。」
桔梗と彩葉の質問に「やっぱり言うと思った。」と、溜息をつきながら面倒くさそうに答える輝。
「それに、家でも殆ど会わないし。」
「皆さん、試合に動きが…。」
舞琴と同じく、真剣な眼差しで試合を見ていた姫華に促され、試合に目を戻す3人。
「きりやー、いつまで時間掛けてんだよ。アタシもう暇が限界なんだけどー。」
R4のリーダー、暁月が暇を持て余したのか、手遊びをしながら言う。
「聞いたか…?ウチの大将が退屈してるみたいだ…。悪いが遊びはここまでにしよう…。」
その言葉に杏子が目つきを鋭くする。
「ナメんじゃないわよ!」
杏子は炎を纏い、霧夜を睨みつける。
「どうした…?気に障ったか…?」
霧夜は表情を変えることなく首を傾げる。
「バカにするな!アンタなんて攻撃してきてないじゃない、それなのに勝てるわけが…。」
怒りで、更に勢いを増す杏子の炎だったが、その言葉を遮る様に、霧夜は静かに呟いた。
「いいや、既にチェックだ…。」
「え…?」
霧夜の言葉に一瞬、呆気に取られる杏子だったが、彼が足元を指差し、自分の足元を見ると、霧夜の足元で生じていた凍結が杏子の足元までへと続き、彼女の足首までを完全に凍りつかせていた。
「なっ…!?」
「お前が激昂している間に凍らせる事など容易かった…。そして…。」
霧夜は杏子の懐へ一瞬で潜り込むと、氷の剣を彼女の喉元に突き付ける。
「これで、チェックメイトだ…。」
「くっ…。」
「どうする…?これ以上続けるなら、俺はお前の喉笛を掻っ切るだけだが…?」
霧夜は無表情に冷酷な雰囲気を纏わせた言葉で杏子への最後通告を言い渡す。
「ギッ…ギブ…アップ…。」
余程相手の策略に嵌まってしまったのが悔しかったのか、瞳に涙を浮かべながら降参の意を口にする。
カンカンカーンッ!
それと同時に試合終了のゴングが鳴る。
「冷静さを身に付けて出直して来い…。」
踵を返して自陣に戻る霧夜と、彼から解放された安堵と屈辱でへたり込むと同時に泣き出す杏子を観客席から眺めながら、
「スゲェ…。」
「味方の何気の無い催促を挑発に利用した…。」
「さすがR4です〜。」
輝と舞琴を除く3人はそれぞれ感嘆の声を上げる。
「…舞琴…上がって行ったらアイツと戦うのは恐らくお前だと思う…攻略できそうか?」
「ダメだ…全然見えてこない。流石にあそこまで完璧な脳内詠唱だと、攻略法どころか発動のタイミングすら見つけるのは困難かもね。」
真剣に試合を観察していた舞琴への輝の問いに、彼女は肩を竦めて答えた。
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