novel

□忘れ物
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教科書が無いことに気づいたのは授業開始のチャイムが鳴り終わってからだった。
騒がしかった教室は次第に静けさを取り戻し、授業担当の教師の足音が段々大きくなって来ていた。



れ物



(朝、確かに入れたはずだ。)

そう何度も思い返せども、机の中にもリュックの中にも教科書はない。落としたか、記憶違いか、はたまた盗難か。

仕方がないのでノートだけで授業を受けようとした時、何かと目敏いカカシが俺の様子に気がついた。

「あらら、我愛羅君、教科書忘れたの?」

「はい、すみません。」

カカシの声は低いが、教室によく響いた。

「分かった。準備室に予備があるから、一緒に取りに来てくれる?」

普段忘れ物など滅多にしないので叱られることはないが、こうも優しく言われるとなんだか不気味だ。

俺は席を立って、カカシの後に続いて教室を出た。ドアを閉める音は無に等しかった。

誰もいない廊下をカカシと歩く。無言なのは他のクラスが授業中だからなのだろうか。口元はマスクに隠れ、背の高いカカシの顔は、ここからでは見えない。




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