novel
□Don't wake up!
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普段は人の立ち寄らない小さな洞窟。
その穴の奥からは、任務中の兄弟のたわいもない会話が聞こえた。
「…それでさ、バキ先生が…、あれ?我愛羅?」
パチパチと燃えているたき火の横で、さっきまで喋っていたはずの我愛羅はすでに寝息を立てて眠っていた。
Don't wake up!
「はあ…またかよ…」
あの暁の一件で尾獣が抜けてから、我愛羅はよく眠るようになった。
「よく」なんてどころじゃない。
会議の合間や、書類が片付けば、すぐ眠りに落ちてしまうのだ。
今まで守鶴の所為でろくに眠れなかったからなのか、まるでこれまでの不眠の日々を埋めるように、我愛羅は眠る。
一時は皆不安になって医療班に診てもらったこともあった。
だが、診断の結果はいたって健康。
何の問題もないとのことだった。
「全く、世話の焼ける弟の所為で、兄貴は心配が絶えないじゃん。」
たき火に照らされる寝顔を、カンクロウは優しく撫でた。
撫でているうちに、
普段あまり表情を動かさない我愛羅の顔で遊んでみる。
「へへ…変な顔じゃん。」
指先で突いてみれば、柔らかい頬は簡単に形を変えた。
「にしても白いな…、こいつ…」
生まれた時から砂に包まれ、太陽の光に当たる機会の少なかった我愛羅は、そこらの女よりも肌が白い。
(抱くならこういう奴がいいよな…)
はっ、と我に帰ると、あらぬことを考えている頭をぶんぶんと振る。
「な、何考えてんじゃん…弟だぞ…」
だが、一度考え始めてしまうと思考は止まらず、カンクロウはモヤモヤとした気持ちを抱えたまま、眠っている我愛羅を見下ろした。
見張り役の交代の時間は、まだ先だ。
「…少しくらいなら、許されるよな…?」
我ながら危ねえ奴じゃん…、とカンクロウは一人で溜息を零した。