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□雪の日
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余りの寒さで目が覚めた。
気づけば俺は顔まで布団に突っ込んで、丸まるようにして眠っていた。

なんとなく心当たりがして窓を開けると、やっぱりだ。



の日



「積もってら」

色とりどりの里の屋根は今は真っ白な雪で覆われて、何処もかしこも銀世界だ。
昨日の夜から大雪が降るとは聞いていたけど、こんなに降るなんて知らなかった。

「ちっと外に出てみっかあ」

四季があるっつっても、木の葉でこんなに積もるなんて珍しい。
いつもと違う景色に目を奪われながら、俺は上着を手にとり家を出た。

通りを歩けば、雪だるまや雪合戦に熱中してるガキンチョなんか居て、里はちょっとしたお祭りみたいだ。
まあ雪掻きに忙しいオッサン達はそれどころじゃないだろうけどさ。

何処に行くとも決めないままに出掛けたので、進む方向は足の向くまま気の向くままだ。

と、里をぶらぶら歩いているとふと見覚えのある赤い髪が見えた。

気になったので近づいてみると、向こうが先にこっちに気づいたみたいだ。

白い景色に赤はよく目立つ。

「ナルト」

「我愛羅!どしたんだ、こんなところで。買い出しか?」

「…まあそんなところだ」

我愛羅は雪が積もった屋根を見つめていた。

「じゃあ俺も買い出し付き合うってばよ。今すっげー暇してたんだ」

俺は我愛羅と並んで白くなった道を歩いた。
歩いた後は、雪が踏み固められて跡になって残っていく。

「なあなあ、買いだしって、何買うんだ?」

俺は我愛羅に気になっていたことを聞いてみた。

「…そうだな、軽い食事になりそうなものや…あとは切らした忍具などだな」

「ふーん。姉ちゃんと兄ちゃんのも?」

「ああ。」

と言いつつ、我愛羅は一向にどこかの店に入る気配がない。
しきりに辺りをキョロキョロとしたり、足元を見ながら歩いていると思えば、たまに通りに作られた雪だるまを見たりしているだけだ。

「なーあ、大分歩くけど、どこで買うか決まってんのか?」

この通りを抜ければ店がほとんどなくなってしまうことを知っていた俺は我愛羅に問うた。
我愛羅は今そのことに気づいたかのようにはっとした。

「じゃあ、ここに入る。」

とって付けたように言うと、我愛羅はコンビニくらいの小さな店に入った。俺もそれに続く形で中に入る。

「そういや、いくらぐらい持って来たんだ?」

俺がそう聞いて、我愛羅が財布から取り出した金額は…

「…え、これで買い出し任されたの?」

「…す、砂と木の葉では物価が違う…」

「違うっつったって少なすぎだろ!!これじゃあ一人分の飯も買えねーってばよ!!」

そう。我愛羅が差し出した金額は、ガキの小遣いよりも少ないもので、俺は思わず我愛羅達の生活を疑った。

「なあ、本当に買い出しに来たのか?おめーにしちゃあ抜けすぎじゃね?」

元々こいつは頭が良いはずなんだから、俺でもやらかさないようなミスをするはずはなかった。

「…俺の勝手だ。これで買えるものを買う。」

そう言って、我愛羅が手に取ったのは一本の缶コーヒーだった。とんだ買い出し係だ。

「はーあ。そんなの買って帰って、姉ちゃんも兄ちゃんも怒るぞー」

コンビニから出ると、我愛羅はカパ、と缶のタブを開けた。
隣からコーヒーの香ばしい匂いが漂ってくる。
甘い匂いだけど、飲むとすっげー苦いことは知っていた。
だから、あんまりコーヒーは好きじゃない。

買い出しは上手くいかなかったのに、我愛羅の奴はひどく満足そうだった。

そこで、ぽつりと、我愛羅は白い息を零しながら呟いた。

「俺は、雪を直に見るのは始めてなんだ。」
「…あ…」

そこで、俺は、
なんで我愛羅が里を歩いているのかわかった。

回りの風景をずっと見ているのも、なかなか店に入ろうとしないのも、お金をあまり持って来てないのも。

我愛羅は買い出しなんてものは最初からしてなかったんだ。

俺が始めて里を出た時、波の国の風景が珍しくて、はしゃいでしまったように、我愛羅も大人しいながらに、はしゃいでいたのだ。

「…?なんだ?」

俺がそう思っていると我愛羅が訝しげにこちらを見ていた。

「ん、いや。なんでもねーよ。」

にしし、と笑って、俺は我愛羅の飲みかけのコーヒーを引ったくって、ぐび、と飲んだ。

「雪ん中の里の観光に付き合ってやったんだから、いいだろー」

コーヒーは相変わらず苦くて、思わず顔をしかめたけど、我愛羅の真ん丸に見開かれた目が視界に入って、また笑った。




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