ARASHI in GINTAMA-story

□雨と晴れと曇りと嵐(番外編)
2ページ/7ページ

1.買い物篇







『買い物に行かねばならないな』

刀の手入れをしていた桂が、ふとそんな事を呟いた。

『…確かに、もう食料もそんなに無いけどよ…金も無いだろ』

そんな話を四人がしているのを尻目に、大野が何気なしに自分の腰に巻いていたウエストポーチから財布を取り出した。

「――――っ!?ちょ、に、にの!!」

「何さ大野さ――――」

あまりの衝撃に、何も言えなかった。
大野の財布の中には、一円玉も十円玉も札も無く、金やら銀やら小判やらが入っていたのだ。

「…もしかして、この時代でも使えるようにお金を誰かが変えた…?」

「誰かって誰さ」

「そんなん俺が知るかっ!」

『何やってんだお前等』

ヒソヒソと固まって話す五人に、銀時が不審げな目を向けていた。
大野はそんな彼に体を向け、相変わらず泣きそうな顔をして財布を差し出す。
銀時は差し出された財布を受け取り、中身を確認した瞬間目を見開き、有り得ないものを見るように大野の顔を見つめる。

「あ、あの…」

『…智、お前金持ちか?』

『何だァ?金持ってたのか?』

『…3両は入ってるぞ』

『『『はぁ!?』』』

「……翔ちゃん、3両って凄いの?」

「1両は大体13万円くらいの価値があるらしいよ?」

「「そんなに!?」」

桂達が大野の財布の中身を凝視している時、四人は自分の財布の中身を確認してみた。

二宮の財布の中には1両。
櫻井の財布の中には2両。
相葉の財布の中には1両。
松本の財布の中には3両。

その他にも穴が空いた銭や小さな銀片が入っていて、その価値がよく分からなかったが、まぁ兎に角凄い事は分かった。

『凄いのぅ!おんしら意外と金持ちじゃな!』

「あんま喜べないんだけど…」

櫻井が苦笑いを浮かべて迫る坂本に財布を差し出した。
他の三人も同様に財布を銀時に手渡している。

「俺等この金はよく分かんないから…」

「これで、必要なもの買ってよ」

『『………え?』』

銀時達が財布を片手に固まったのを見て、五人も曖昧に笑い顔を見合わせる。

「俺ら使わないし…みんなが使ってよ。それがあれば食べ物手に入るんでしょう?」

食料や衣服や医療品は、恐らく不足しているのだろう。
物資が少ない中で戦う彼らは、何よりも美しいと思うから。

桂達は互いに困惑した顔で互いを見、そして財布を両手で持つと、恐る恐るといった体で口を開いた。

『……いいのか?』

『わしら、返せないぜよ?』

「……………そんなん」

松本が二人の言葉に苦笑を漏らす。
見れば松本以外の四人も似たような顔をしていた。

求めてないよ。
育ち盛りの彼らが録に食べずに頑張っているんだ。
目先の小さな争いじゃなくて、もっともっと先の――10年20年、30年後の未来の為に。
その広いとは言えない背中に命や罪を背負って。

「遠慮すんなよな。俺らがいいって言ってんだから!」

『あ、ありがとうぜよぉぉ!!』

「うわっ!」

『本当に助かる!ありがとう!』

『…ありがと』

松本の手を坂本が両手で握り締め、他の三人も思い思いに感謝の言葉を紡ぐ。
その姿から、今の現状がどれだけ悲惨で貧しいものなのかが分かり、五人は笑顔の中に少しだけ痛ましさを隠した。

『じゃあ町に行こうか』

『智達も来いよ。折角だし』

「え、いいの!?うわ〜超楽しみ」

「相葉ちゃんテンション高すぎでしょ」

早速テンションが上がった相葉を尻目に、櫻井が部屋の隅に置いていたスニーカーに手を伸ばした。

すると、その背中に銀時が手を置く。
靴を片手に櫻井が振り返れば、銀時は何とも言えない顔をして立っていた。

『……お前等、そんな奇天烈なナリで町に行く気か?』

「…どっか変かな?」

銀時の言葉に目を丸くして、相葉がTシャツの裾を摘まむ。
その様子に銀時は軽く頭を抱え、櫻井の上着を掴んだ。

『そんな服で外に出たら天人って言われても文句言えないぜ?運が悪けりゃ殺され……智、そんなこの世の終わりみてぇな顔すんなよな』

殺されると言われただけで顔面蒼白になり、二宮の腕を何故か両手で抱え込む大野。
そんな彼を、銀時を含めた9人が苦笑いを浮かべて見やった。
だが大野はそんな9人の目には構っていられないと言わんばかりに二宮にしがみつき、二宮もしょうがないなぁという顔で大野の頭を撫でている。

その異様な雰囲気に、四人は松本達に近付いた。
その顔には明らかな困惑が浮かんでいる。

『……なぁ、あの二人って…』

「付き合ってないよ?」

「そうそう。あれが二人の日常だからね」

『お互いがお互いを大好きなんじゃのぅ』

『む、和也が智の尻を撫でておるぞ。あれはいいのか?』

「気にしたら負けだよ」

最初は二宮が大野を慰めている体だったのに、気が付けば二人はイチャイチャし始めていた。
どう見ても恋人同士の醸し出す雰囲気ではあったが、櫻井達が違うと言うなら…と若干疑問を抱きながらも四人は自分を納得させる。

しばらく二人だけの世界に居た二宮と大野だったが、胡乱な目で自分達を見つめる8人に気付き、二宮はニヤニヤしながら、大野は少し照れながら離れた。

『危うく発狂する所だったぜ…』

「ご、ごめん…」

「で、何の話だったっけ?」

『だから、その服で出たら天人と間違われて殺され……あ』

「こっ…殺…っ」

『だぁぁぁぁあ!!もう面倒くせーよテメーはよぉぉ!!しゃきっとしやがれぇぇ!!』

このままではいつまで経っても買い物に行けないと判断した銀時が、ちょっと待ってろと言い残して部屋から出ていった。
何をしに行ったのかは桂達も分からないらしく、互いの顔を見合っている。

そして30秒もしないうちに帰ってきた銀時は、近くに居た相葉に風呂敷を手渡す。
ズシリと重いそれに、相葉が首を傾げた。

「えー、銀時なにこれ?」

『着物だよ。お前等が寝てる時に寸法測ったから、多分合ってる』

「測ったの!?」

「あ、ほんとだ」

結び目を解いた風呂敷から出てきたのは、五着の着流しだった。
その綺麗に畳まれた着物を徐に銀時が掴み、五人それぞれに無言で渡していく。

相葉には、深緑の布地に青竹が描かれた着流し。
二宮には、淡い橙色の布地に赤い紅葉が散りばめられた着流し。
大野には、白い布地に蒼い流水と赤い紅葉が描かれた着流し。
櫻井には、真紅の布地に大小様々な蝶が舞う着流し。
松本には、薄い紫の布地で黒襟、布には手鞠が描かれた着流し。

それぞれのイメージカラーとほぼ同じ色の着流しを渡した銀時を、五人は不思議そうに眺めた。
そんな五人の視線に気付いた銀時が眉を寄
せる。

『…なんだよ?』

「……これさ、銀時が選んだの?」

『あ?ああ、そうだけど…気に入らねぇか?』

「そんな事ないよ!ちょっとイメージと被っててビックリしただけっ」

『いめーじ?…まぁいいや。じゃあさっさと着替えろよな』

「………え、ここで!?」

『何か問題があるか?男同士ではないか』

((……そりゃそうだけど…))

けろっとして言う四人に嵐五人は顔を見合わせて、まぁいいかとTシャツを脱いだ。
銀時に手渡された着流しの裾に腕を通せば、それが現代のように心地よい生地で出来ていない事が分かった。
着流しの下でジーパンを脱ぎ、帯を締めてお互いを見る。

『…へぇ、なかなか似合うじゃねぇか』

『うん、よう似合うとるぜよ』

「ほ、ほんとう?」

少しの違和感があったが、五人は満足げに笑った。


「うわぁ〜、草鞋なんて久し振りだね」

「おっ、すげぇ!」

サンダルや靴とは違い、本物の藁で編まれた草鞋に足を入れ、五人が新鮮な反応をする。
その光景は異常ではあったが、早くも慣れたのか四人が突っ込む事は無かった。

『しっかし…久しぶりに町に行くなぁ』

『晋ちゃんは色町に行ってるじゃんね〜』

『ほうじゃほうじゃ!わしらも偶には連れて行くぜよ!』

「…翔ちゃん、色町って?」

「まぁ俺等で言うネオン街の事かなぁ」

「「へぇ〜」」

天人の奇襲で大破した門を通り過ぎ、所々が欠けている石の階段を降りていく。
来た時は気にならなかったが、辺りに目を向ければ、痛いくらいの深緑が飛び込んできた。

木漏れ日が木々の隙間から惜しみ無く降り注ぐ景色は美しく、鳥が囀ずる声の響く空間は一種のオーケストラのような、そんな感覚になった。
普段聞き慣れないからこそ、凄いと思えたのかもしるない。

「最初に何買うの?食べ物?」

『いや、とりあえず包帯や薬草を買う。食料よりも大切だし、足りねぇんだよ』

「なるほどね〜」

喧しいくらいに耳鳴りがする森を抜けた五人が目にしたのは、人々の活気で賑わう小さな町だった。
買い物と言われると大型スーパーなどを思い浮かべていたため、若干の戸惑いは隠せない。

『じゃあ…潤は晋助と、智は銀時と、雅紀はヅラと、和也と翔はわしと行動ぜよ』

『『『うーい』』』

「「「「「はぁーい」」」」」

取り合えず仕組みが分かっていない五人を振り分け、自由行動となった。
人選に問題がある気もするが、そこは気にせず話は進むのであった。







次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ