ARASHI in GINTAMA-story

□雨と晴れと曇りと嵐
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某月某日。
今や知らぬ者は居ないとさえ謳われる国民的人気アイドルグループ嵐は、コンサートをあと数時間に控えていた。
といっても二宮はゲームに没頭しているし相葉は漫画を読んでいるし櫻井と大野は寝ているしで、進行表と歌詞カードを読んでいる松本を除けばとてもコンサートを間近に控えているとは思えない。

「……相葉ちゃん、ニノ、そろそろ翔さんとリーダー起こした方が良いんじゃ…」

「えー、まだ良いでしょー。…お、討伐できた…」

「育ち盛りなんだよ〜」

「…いや、この二人はもう育たないって。それに、もう起こさないと衣装とかあるし」

「あー、じゃあ起こしちゃう?」

チラッと時計を見上げて、二宮が仕方ないと言わんばかりに気だるげに腰を上げた。
三人は爆睡するオヤジ…もとい、櫻井と大野の肩を掴むと、遠慮なく前後に揺さぶった。

「リーダー起きてー。朝だよー」

「翔ちゃん起きないと後ろ更に刈り上げちゃうよ〜」

「「……それは嫌だな…」」

「んー…」

二人は騒々しさと気持ち悪さに目を覚ました。
僅かに顔色が悪かったが、原因である二宮と相葉は可憐にスルーしている。

「…あれ…」

「何ボ〜っとしてんですか?もうそろそろ時間だよ」

「あー…」

「……駄目だこりゃ」

眠気眼で頻りに辺りを見回す大野に、早くも目を覚ました櫻井と松本達が苦笑いした。

「……水…」

ふらふらと立ち上がり、大野は備え付けの冷蔵庫から水を取り出すと、ふと顔を上げて部屋の隅を見やる。
その訝しげな視線に四人は顔を見合わせ、大野の視線の先を見た。

「あんな所に扉なんてあったっけ?」

「………いや…」

「うわぁ!これ凄いね!スタッフさん達が付けたのかな?」

一人だけ何故かテンションが高い相葉を他所に、二宮と大野が扉に近付いた。
木で作られたそれは色褪せ、しかし腐敗はしていないのか叩いてもびくともしない。
備え付けたにしては釘は見当たらず、まるでずっと此処に存在していたような扉だった。

「……開けるな危険…的な事は書いてないね」

「だね……あれ?ここ、何か書いてある」

「…うわ…これ読めないよ流石に」

ミミズが這ったような文字を見つめて、櫻井が顔をしかめた。
うーんと唸っていると、大野が扉に手をかける。

「ちょ、なにする気!?」

流石に大野を二宮が止めるが、大野はいつもの平然とした顔を二宮と三人に向けて、二宮の制止も虚しく扉を開いた。

扉の中は、闇だった。
黒に塗り潰された壁ではない。
漆黒の闇が目の前に広がっているのだ。

おっかなびっくり中を覗く五人に突然耳鳴りが、まるで警鐘のように鳴り、ややあって低く暗い声が響く。

『悠久の時の流れに逆らう愚か者が…再び我が時の扉を開くか』

「!?何だよこの声!!時の扉ってナニ!?」

『望む世に往くがいい。時の流れに逆らいながら、永久に流離うがいい』

「無視か!…あれ、なにこれ」

謎の声が聞こえなくなると同時に、凄まじい突風が開け放たれた扉から吹いた。
真っ暗な闇の中に吸い込まれたのか辺りは噎せ返る漆黒に包まれ、しかし五人はお互いの姿を見る事が出来ている。

足をついている訳でもないが、落ちているわけでもない。
かといって浮いているような感覚でもなく、何とも不思議な空間に五人は佇んでいた。

「……リーダーどうすんの?」

「…ごめんなさい」

「まぁこの状況でリーダー責めても仕方ないよ。それより、此処は扉の中…かな」

ジトっと二宮に睨まれて大野が謝り、それを櫻井が庇いながら辺りを見渡した。
どれだけ目を凝らしても一点の光さえ見当たらない完璧な闇の中は、何とも居心地が悪かったが、どことなく安心する。

その時、完全に油断していた五人を再びあの突風が襲った。
すると、まるで底が抜けたかのような一瞬の浮遊感の後、五人は何も見えない闇の底に吸い込まれる様に落ちていった。

「ちょちょちょちょ!何でいきなり落ちんの!?オカシイでしょ!」

「ホントごめん松潤っ!」

「つーか俺達死ぬんじゃねぇの!?」

「まだ三●猫終わってないんですけど!」

「コンサートの心配しろよお前は!」

銘々に叫びながら、五人は誰に知られるでもなく、深い闇を落ちて行く。
もう駄目だと諦めかけた正にその時、五人の視界が唐突に開けた。

「「「「「うぎゃあっ!」」」」」

ドスンという鈍い音と共に、五人は地面に尻餅をつく。
痛みに顔を歪めながら見た景色は、先程までの濃い暗闇ではなかった。

そこかしこから上がる硝煙。
あちこちから聞こえてくる断末魔の叫び。
鼻腔を突く泥と血と火薬の臭い。
草一つ生えていない焼け焦げた大地。

これなら暗闇のままが良かったと五人が溜め息を吐いた時、ザリッと足音がして五人の前に四本の脚が止まる。
はて、と顔を上げれば、そこには二人の少年の姿があった。
見覚えのある顔に、五人は顔を見合わせて短髪少年と同時に大野が口を開いた。

『智…?』「晋助くん…?」

ドォンッと何処かから爆発音が聞こえていた気がするが、その時は何も聞こえなかった。
 
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