小説

□第2章〜馬鹿の取り扱い説明書募集中〜
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*遥本side*

朝、心地良かったはずの眠りから目が覚めた。


何故良かったはず、なのかは今目の前にいる単細胞生物のせい。
何故コイツが俺に引っ付いて寝ているんだ、甚だ理解得ない。
いや、理解できるな、この馬鹿のことだから。
どうせ上半身裸で寝る習慣のある俺に興奮して、俺が昨日あけた穴から通って今に至る、間違いないだろう。


というかプライバシーも何もあったもんじゃない。あの穴から俺の私生活は丸見えである。自分があけた穴だが、原因はコイツだ、俺は悪くない。
とりあえずこの馬鹿をはがして床に投げつけ無理やり起こせば、鼻を強打したらしい桜はごろごろ転がりながら悶絶している。


すかさず奴の体を踏みつけ、上から見下ろす。
「おい、何故お前がここにいる。不法侵入だ、警察呼ぶぞ」
「踏みつけられるなんて…!!いただきましたドSの真骨頂!はい!私は夜、先生の裸に興奮しまして、先生のあけた穴から通り今に至る次第で御座います!」


俺の予想まんまじゃねえか。
やっぱ、単純。


「良いからさっさと学校の支度しろ!」
穴に向かって蹴り飛ばすと、桜はひぃっ!と何とも情けない声を出して自室に戻っていった。
俺も奴が部屋から出たのを見計らって着替えを済まし、支度をする。ちゃっかり朝食を桜に作ってもらったりなんかして、俺達は学校に向かった。




HRも終わり、一時間目の直前、桜の教室は英語である。
俺は2日目にして突然のキャラ変更をする。そんな超不自然な事を本当にアイツが上手くごまかせるのか?というより何故俺がキャラ変なんてしなきゃならねぇんだ、そうだ、アイツだ。


…全部アイツじゃねえか…


まあいい、あんな自信満々に大丈夫と言ったんだ、今だけアイツを信じよう。


教室の前に着いた時、ドアの前には桜が待ち伏せしていて、桜が合図するまで教室に入るな、ということらしい。


授業開始のベルが鳴る。
と、同時に桜が凄い勢いでドアを開き------


スライディング、した。


「たっっ!!たたたたた大変だぁーっ!!!遥本先生が、あの爽やかな遥本先生がっ!!頭を
強く打って人格が変わってしまったーーっ!」


……………。


……………………。


……………………………。


…アイツ、馬鹿だ…………………。


いや、今だけでも信じようとした俺が一番馬鹿だった…ほら、教室もざわついて------


「えっ?!遥本先生が?!大丈夫なの?!人格って、どのくらい変わってるの?!」


………信じるのかよ……。


ああ、もう全員馬鹿ばっかりだ。
「……もう、かなり。悪いけど、もうあの爽やかさは先生に…無い」
「ええっ?!」
「でも安心して!みんな!爽やかな先生は居ないけど、その代わり今のキャラは……」
クラス全員がごくり、と唾を飲む。
もうどうにでもなれ、俺は知らない。


「今度のキャラは………
ドSよ!!!!!!!」
「きゃぁあああああああ!!!!!」
「さあでは登場して頂きましょう!ドSの!遥本先生です!」
「きゃあああああああ!!!!」


煩い声援が聞こえる。ドSは女子のツボらしい。
教室に入り、まず一言。
「そのうるせぇ口閉じろ、馬鹿共」
一気に女子の顔が茹でダコの様になり、熱い視線が注がれる。


「……それと、桜」
「はい?………ぃだぁっっ!!!」
俺は持っていたファイルを頭に叩きつけた。
「その頭、どうにかなんねぇのか」
「なっ?!失礼ですよ?!頭は正常です!」
「ばーか」
「む?!馬鹿って言った方が馬鹿よ!馬鹿馬鹿ばーか!!」
「…席着け……」


もう呆れて反論するのを諦めた俺は渋々席に着いた桜を確認し、今日の授業内容を言い渡す。


「今日は小テストだ。50点以下とった奴は特別に宿題を出す。プリント10枚、3日以内にやってこい」
えーーーー!!!という声を軽く無視し、小テストを嫌々ながらやる生徒を見て、やはり素が楽だ、と実感するのだった。
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