小説

□〜プロローグ〜BL本返せゴルァ!!
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「……お前は俺のもんだ。悠」
「京…哉…」


悠は目を見開き信じられないといった顔をした。そんなはずはない---だって京哉は、京哉は---


「俺の側からもう、離れるな。分かったか?」
それはあまりにも真剣な眼差しで。
それはあまりにも優しい声音で。


「…俺も京哉の近くにいたい…」
気付けば涙ながらにその言葉を口にした悠を、京哉はそっと腕の中へ引き寄せた。
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「きゃあああああああ!!!!ついに…!ついに結ばれおったで!良かったね…!悠…!」
まだ人の少ない朝の教室で本を手にした桜が叫んだ。


「朝っぱらからうるさいなぁ。読書するなら静かに読んでよ」
親友の突然の大声に顔をしかめた峰原秋香(ミネハラシュウカ)は鬱陶しそうに言う。


「桜この前もそんな本読んで、先生に取り上げられたじゃん。授業中になんか読むから。」


そう。何を隠そう私桜 千鶴(サクラチヅル)は生粋の腐女子である。何しろBLというのは、神聖なる物なのだ。その“神聖”とも呼べるべき代物をこの前英語の授業で取り上げられてしまった。
後で返して貰えばいいや。そう思っていたのに。なのに。なのになのになのに。


「そうなんだよっっ!!あの先生、あたしのBL本取り上げた次の日に入院だよ?!しかも入院期間3月までだよ?!あたしが3年生になるまで返ってこないんだよ?!だよだよだよ?!」


遡ること一週間前。私は授業中とてもとても神聖な本、いや、聖書を読んでいた。
それを見つけた30代くらいのキツそうな女の先生が、聖書を取り上げた。その天からの罰が下ったのだろう。その翌日、その先生は前々から抱えていたヘルニアを悪化させ、聖書を返さぬまま、入院を余儀なくされ今に至る。


親友の秋香は呆れたと言わんばかりにため息をこぼした。


「しょうがないなあ。良いこと教えてあげるよ」
「イイコト?」
良いことって何だろう。クラスの男子総受け担当の新井君が襲われでもしたのだろうか。


「そう、良いこと。今日全校朝会あるでしょ?その先生の代わりに来た先生の紹介が今日あるんだけど、新しい先生、若い男の先生だってよ。しかも姿を見た生徒によると、かなりのイケメンらしいよ。」


へぇ。そうかそうか新井君がついに…って、
「…オトコ?…イケ…メン?……イコール。」
イコール。
イコール。
「BLの光る原石じゃああああああ!!!!」


秋香は桜の大声に耳をふさぎ、教えなきゃ良かった、と後悔していた。
 

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