え、あぁ、うん。うちの兄です。

□丹波家
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「いーてぃーゆー…」
「うん!!!行かない!!?練習見学に!!!」
「い、行きたくない…」
「なんで!!?あんたまさかヴィクトリー派!!!?持田な訳!!!??」
「いや、なんでヴィクトリー=持田選手なのかは知らないけど、取り敢えず行きたくない。」



昼休み大学の友人から誘われたETU見学
なんでも友人は今季活躍している椿選手がお気に入りのようだ



「一人で行ってきなよ、それくらい。」
「無理無理無理無理!!!!一人で応援とか死んでも無理!!!恥ずかし過ぎる!!!!」
「他にも居るわよ。応援位」
「そうじゃなくってさぁ〜、ほら、一華苗字丹波じゃない?ETUにも丹波選手っているんだけど、話しのネタにさぁー」
「付いて来いって?嫌です。」
「一華ちゃぁん」
「甘えても無理だって……」



こんなにも嫌だと言っているのに友人は諦めを知らない

するとおもむろに鞄から財布を取り出して二枚の紙を取り出す


「それ…」
「最後の手段にとっておいたけど、仕方無いわね。一華が食べたいって言ってたケーキバイキングの店の二時間無料券〜」
「………!!!」


目の前でヒラヒラとしているのは最近雑誌で紹介されていたスイーツショップのチケット

お金のない甘党学生には喉から手がでるほど欲しい



「欲しい?欲しいの?じゃあ、一緒に見学に行く?」
「〜〜!!!」


欲しい。
凄く欲しい。
最近友人とバイキングなんて行って無かったから久しぶりに行きたい。
だけどETUにはアイツが………!!!




「………………………い、く………」
「マジでっ!!??よっしゃ!!!じゃあ明日見学行ってからケーキね!!!」
「………っ…分かったわよ……」



魅惑の無料券には逆らえなかった

終わればケーキ終わればケーキと呪文のように呟いて

来たる日は来た



「やっばぃカッコイい!!!」
「うん、そうだね。早く行こうよバイキング。」
「来て一分で何言ってんの。」



友人は自主練している椿選手を見て興奮気味だ
怖いよ、ねぇ。


危惧していたアイツはまだ来ていないようなので見つからない内に早く帰りたい



「一華さぁー、何がそんなヤなの?」
「え!!??いや!!?別に!!?」
「狼狽え方異常だよ。何なに?気になるー」
「気にならなくていい!!!早く椿選手目に焼き付けてバイキング行こう!!!」
「えー、ちょっと待ってー。あ!!!ベテラン陣!!!」



ビクッと肩が揺れたのを自分でも感じる
見つからないよう出来るだけ後ろに、出来るだけ顔を下に向けているがアイツは気付く。
早く帰りたい。見つかったら長年の私の努力が!!!



「あ?なぁアレ一華か?」
「…あの女の子か?確かに雰囲気は似てるけど…おもっきし顔逸らしてんぞ。」
「絶対一華だって!!!おーい!!!!一華ー!!!!」
「!!!」
「え、一華?呼ばれた?」



冷や汗が尋常じゃなくなってきた
気付いたよ。やっぱ、アイツは気付くんだよ。



「え、なんか丹波選手こっちにきてんだけど。凄い笑顔なんだけど」
「逃げよう!!!」
「え!!?」


ガッと友人の腕を掴むが既に遅く

もう目の前まで来ていた


「やっぱ、一華じゃん!!」
「え、知り合いなの…!」
「知り合いっつーかなんつーか…」
「えー?なんだよ、お兄ちゃん傷つくぅ!!」
「お兄ちゃん!!!??」



バレた
バレてしまった


何人かは序盤で気付いていた人もいるだろうが、

そう
何を隠そう、家族を隠そう
私、丹波一華はこの丹波選手の



「俺の妹だよ、一華は。」
「嘘ぉ…」
「嘘でいいよ、もう…」




これから友人に見学に付き合わされる日が増えたことは言うまでもない



(堺さんみたいなお兄ちゃんが良かった…)
「一華ー?」
「写真いいですか!!?」
「お、いいよー、はいはいチーズ!!」
(お願いだからもう少し落ち着いて欲しい。)



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落ち着きのない兄が少し恥ずかしいメッチャ落ち着いてクールな丹波妹
 

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