薔薇

□罪深い小人
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その人を知ったのは俺が高校3年の時


その年大阪ガンナーズに入団した1、2歳年上の黒髪の人は入るや否やすぐに成績を収めて五輪や日本代表に呼ばれるようになった

憧れに近かった



次の年から俺はユース上がりでETUに加入した

勿論死ぬ気で練習した


あの人と渡り合えるように




「あ」
「…ETUの、選手さん?」




その日は俺が初めて大阪ガンナーズの試合に交代で出た時

勿論その人はスタメンで


漸くこの人と同じフィールドに居る


その事が嬉しかった



アウェーで、相手のホームだったETU
案の定、場馴れしてなかった俺は地味に迷っていた


そんな時会ったのがその人だった


「何、迷った?」
「………まぁ、そんなトコっスけど……」
「あー、若手か。ならしゃあないよな。ETUはあっちだぜ。」
「え?」
「連れてってやんよ」
「……ありがとう、ございます…」
「いいって、俺小室な。お前は?」
「赤崎です。」
「赤崎、ETUの赤崎な。よし、覚えた」



その笑顔に

今から闘う相手に向けたその笑顔に、


俺はこの感情を気付かされたんだ



「え゙、赤崎って年下!?」
「幾つに見えたんスか…」
「いや、おないかなぁって…」
「それ褒められてるワケないスよね」
「いや、うんゴメン。」


スタスタとロッカーまで歩いていると前の角から出て来たのは日本人なら知ってるような有名な選手


「ん、小室。何してんの」
「テラさん!!!」
「大阪の、寺内さん…」


DFとして若手時から代表スタメンに呼ばれていた人材だ

知らない人はいないだろう



寺内さんを見つけた時の小室さんを見て直感が働いたが信じたくなかった

「そのジャージ、ETUだろ?何してんの」
「いや道案内を」
「ふーん、あ、あと15分くらいでアップ始まるから、戻っとけよ」
「はい!!」



じゃあ俺飲み物買ってくるから、と言って俺等が通ってきた道を歩いてく寺内さん

それをずっと見てる小室さんに無意識に言葉をかけていた



「好きなんスか?」
「うぉい!!!!???」


分かりやすく真っ赤になる小室さん

慌てて取り繕う小室さんに比べ俺は幾分落ち着いていた


「……変だと思うか?」
「いえ、別に。」
「…テラさんは俺の目標なんだ。テラさんに憧れてガンナーズに入団決めたし…、だから、その…」
「いいんじゃないスか?誰好きでも。あ、俺こっからなら道わかるんで、行きますね」
「え、あ、おう。……ありがとうな…」
「いえ。」


かすかに握り締めた拳にあなたは気付かないだろう


(貴方が選ぶのは俺じゃない、そう知っていながら)


まだ想い続けています







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