短編

□その男、ブラコンにつき。
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キーンコーンカーン…


新学期。一年生の入学式も終わり、桜も散った頃。
オレは肘をついて窓際の席から外を眺めていた。気持ちのいい陽気だ。教卓では担任教師が何か喋っているがそんなものは全く頭の中に入ってこない。次第にまぶたも重くなってくる。

「……くん、エドワードくん」

気持ちよくまどろんでいると、不意に隣の席の女子に名前を呼ばれ、現実に引き戻された。

「へ!?」
「何ボーッとしてるの、もう今日の授業終わったよ」
「…?」

ふと周りを見渡すとそこには部活に行く人、帰り支度をする人、さっさと家に帰る人、友達との会話に夢中になる人、置き勉する人など、いかにも放課後という風景が広がっていた。担任教師も居なかった。いつの間にか終礼が終わっていたようだ。
オレも慌てて帰り支度をする。



オレの名前はエドワード・エルリック。
(ちょっと背は低いが)何のヘンテツもない高校2年生だ。
他と少し違うところを挙げるとすれば、実家から遠いこの高校に通うためにアパートを借りて暮らしていること位か。
そんなオレだが、最近とある事について悩みがある。それはオレの弟に関する事なのだが…



「兄さん!一緒に帰ろう」
教科書をカバンにしまっていると、突然、声と同時に教室のドアが開いた。
教室の視線が一気に集まる。
そして、その声の主こそオレの悩みのタネとなっている弟だった。
「アルッッここ2年の教室だぞ!?」
一応たしなめる。が、オレの声なんてまるで無視して教室に入ってくる弟。
「関係ないよ学年なんて。ボクは兄さんと一緒に居たいだけだから」
「…アル、とにかく教室に押し掛けるのは止めてくれ」
「どうして?」
「…まわりの迷惑になるだろ」
「そう?でも皆さん全然こっちを見てないから大丈夫だよ」
弟はまわりをみてからそう言った。たしかに、まわりのクラスメイトはもうこちらを見ていない。
(でもそれは皆お前の行動に引いてるからだろ…いい加減気付けよ)
しかし、そう言えるはずもない。
「とにかく帰ろうよ」
「…ああ」
オレはため息をつくと立ち上がって、教科書を詰め込んだカバンを手にとった。
歩き出しても弟はオレとの距離を全くとらず、恋人並みにベッタリとくっついてくる。
別にこれは学校でだけの話ではない。家ではこれ以上にベッタリとしている。一緒にいないのがトイレに行っている時位しかないのではないか、という位に。
こんな生活が始まって一月もたっていないが、いい加減うんざりしてきた。
弟はこれから将来ずっとこんな感じなのだろうか、と考えるとどこからかまたため息が出てきた。





そう、オレの悩みというのは、弟がとんでもなくブラコンだということだ。




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