ポケモン非公式の小説
□第五章
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ミアは腰のモンスターボールを一つ取り出し、ボールをポンと地面に落とした。
ボールから小さな鳥ポケモンが飛び出し、空を飛びまわる。
ユヤは図鑑を開いて、そのポケモンを見る。
図鑑には目の前にいるポケモンの名前が本当に自動で登録されていて、ユヤの興味を誘った。
図鑑は声を発し、『チルット』という名前を言い、そのポケモンについて説明を始める。
チルットは空色の体に、ほわほわの白い綿のような翼を持っているポケモンだ。
「窮屈じゃないように時々出してあげなくちゃね」とミアは言う。
「捕まえたの?」
「うん、この間ね!けど、ユヤがまさかこのアブソルを連れていたなんて思わなかった。大人しいね」
「ああ、こいつあんまり暴れる感じじゃない。」
「じゃあ何であの時暴れてたんだろーね」
ミアはそう言いながらアブソルに近づいていく。
「怖くねーの?」とユヤは訊ねる。一度襲われたことがあるのに、いい度胸をしているな、と思う。
「だってもうこの子、ユヤのお友達でしょ?なら私も仲良くしたい」ミアはそう言って無邪気な笑みを浮かべ、アブソルの顔を撫でる。
友達、というのもユヤにはニュアンスが違うように感じる。
「ごめんね、アブソル。仲直りしてくれる?」
ミアの言葉に対してアブソルは無反応。
「そいつめちゃくちゃクールだから」とユヤは言って、ユヤはリーフィアの前でしゃがみ、頭を撫でる。
「お前は俺に恨みがあんのか?」と水に突き落とされたことをリーフィアに言うが、リーフィアは撫でられていることが気持ちいいのか、目を細めてユヤの手に頭や頬を擦り付けるだけだ。
「その子あなたが好きなのよ」
「で?なんでお前がここに?」
「旅してるんだもの。あなたとどこかで会うことがあっても不思議じゃないわ」
「まぁ、確かに」
「ユヤはこれからどこに向かうの?」
「こいつのいた場所を探すんだ。」
「それで?」
「そこにこいつを放してやる。こいつと約束したんだ」
「一緒にいればいいじゃない。」
「ダメ。俺はトレーナーに向いてない。こいつ何があったか分かんねーけど、きっともといた場所から誰かに連れてこられたんだ。外に出してやったほうがいい。」
「そういうものかな」
「しらね。」
「で、どこへ向かうの?」
「……………」
ミアにそう言われて、ユヤはポケモン図鑑を開きアブソルを調べる。
アブソルたちの分布先はここからまだずっと向こう、地図の端の方に存在する。
「…………うそ」と俺は呆気に取られる。
「随分遠いねェ」
「……はぁ」
「私ね、モリオシティに用があるの。ユヤもここ通るでしょ。途中まで一緒に行こうよ」
「モリオシティもすげー遠いじゃん」
「うん。だから、協力していきましょう」
ユヤは少し考えて、二人の方が何かと助かるかな、と思い「分かった」と頷く。
「ありがとう!新米同士、仲良くしようね」
ミアはユヤに言うと、アブソルに抱きつく。アブソルは何事かと驚いてミアを見る。
「そこにも一応」とユヤはヒンバスを指差す。
ミアは池の中をのぞき込み、「ヒンバス!」と嬉しそうな顔をする。
「ヒンバス好きなの?」
「だって、めったにお目にかかれないんだよ。まさかこんなに早く図鑑に収められるなんて」
本当に珍しいポケモンだったのか、とユヤはようやく知る。
ミアは水の中に手を入れて「私、ミア。よろしくね」とヒンバスを呼ぶ。
ヒンバスは水面を跳ね、ミアに近寄ると額を指につける。
「この子は人懐っこいんだね」