ポケモン非公式の小説

□第五章
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ユヤはこの間シオンとのバトルで手に入れた賞金で寝袋とテントを買った。

シオンは結構所持金を持っていたらしく、それを何割かで貰っても随分と大きな額になった。

ユヤは寝袋とテントを見て、どうにも持ち運び難いな、と頭を悩ます。


アブソルに持って貰うか、とも思ったが、アブソルがかわいそうだな、とも思う。


ユヤはテントや寝袋を地面に広げたまま、近くの池にヒンバスを出してやった。ヒンバスは文字通り水を得た魚というやつで、生き生きと水面を跳ねて遊んでいる。


ユヤはヒンバスを入れていたボールを見て、「あ、そっか」と呟く。

ユヤはリュックから色々な道具を取り出し、目にゴーグルをつけた。

空いているモンスターボールを開き、そこにドライバーを差込み色々といじくると、今度はパチパチと電気を走らせながらモンスターボールの中を細かく溶鉄したりして改造する。


数十分が経過したころには、モンスターボールの改造が終わった。

ラベルも付け替え、見た目もちがう物にする。

ユヤは試しにテントと寝袋にその改造した物を当ててみる。すると、テントと寝袋はその改造したボールのカプセルの中へと入っていった。

 
よし、とユヤは小さくガッツポーズをして、その収納カプセルをリュックにしまう。


ユヤは池で泳ぐヒンバスを見ながら、本当にみすぼらしいポケモンだな、とヒンバスが哀れに思えた。


ヒンバスを呼び、タオルでヒンバスの泥がついたような身体を拭いてみる。


アブソルがそんなユヤのそばによってヒンバスの様子を観察し始める。


ヒンバスは特に嫌がる様子もなく、素直に体をユヤに拭かせた。むしろ、どこか嬉しそうに見える。


アブソルの冷たい反応ばかりを見てきたので、ヒンバスの嬉しそうな反応は新鮮だった。


見映えはよくないポケモンだが、そういう喜ぶ姿は可愛らしく思える。


「お前、見かけによらずきれい好きなんだな」ユヤはそう言いながらヒンバスの体を磨いた。

するとどうだろう。ウロコの一部が、綺麗な艶を放つ。



「へぇ。磨けば意外とキレイなやつなのかもな」ユヤは手を止め、ヒンバスにそう声をかける。


それが嬉しかったのか、ヒンバスはバシャバシャと水を跳ねる。その水がユヤとアブソルにもかかった。

冷たい水が身体を滴る。アブソルは体を震わせて水を払った。さらにその水がユヤに掛かる。

「おまえら…」

 
その時、後ろから何かがユヤに体当たりをする。


ユヤは驚きと衝撃で池の方までつんのめり、結果水しぶきを上げて池へと落ちる。


頭の天辺まですっかりと濡れたユヤは、無言で自分の姿を確認し、自分を池に落とした犯人の顔を見る。


ユヤの立っていた位置に尻尾を振って立っているのは、リーフィアだった。ミアの連れていた、イーブイの進化で草タイプのポケモン。


「リーフィアだめじゃない!ごめんなさい!」


そう言いながら駆け寄ってきたのは、やはりミアだ。


ミアは自分のポケモンが突き飛ばした相手がユヤだと知り、驚いた表情になる。


「ユヤ!えっ?」ミアはそう言ってアブソルの姿を見つけ、「捕まえたの?」とたずねてくる。


「よかった、無事で。心配したんだよ」


「無事じゃないんだけど」ユヤは自分のこのびしょ濡れの姿を見ろ、と言いたくなる。


「ユヤ、あの時はありがとね。助かった」


「いや、俺は逃げただけ」


「あなたがそう言うなら、そういうことにしておくね」
ミアは薄紫色の髪を揺らしながら、笑顔を作る。
 
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