ポケモン非公式の小説
□第二章
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「君、君」
意識がはっきりとしないなか、微かに誰かが話しかけてくる声が認識出来た。
「君、なかなか度胸あるよな」
ユヤはうっすらと目を開く。
ボヤけた輪郭に、金髪の毛があるのが見えた。
「…あんた誰」
「通りすがり。君トレーナーじゃないのに、よくポケモンを相手にしようと思ったね」
ユヤは体を起こして、よくその男の顔を見ようとした。
金髪の、なかなか顔の整った十代後半くらいの少年だった。
ユヤよりは明らかに歳上だ。
「あれ?俺…」
ユヤは自分の泥だらけの姿を見て、何をしていたのか思い出そうとした。
草が湿っていて、尻が少し冷たい。
「アブソルと戦って気絶してた。」
「そうだった。なんでそんなことしってんだよあんた。見てたのに見ぬフリしてたのか」
「違う違う。俺が見たのは君がアブソルの下敷きになって、モンスターボールを投げつけたとこから。」
少年はそう言って人懐っこい笑顔を見せる。
彼の腰にもモンスターボールが着いていた。
だけど、ただのモンスターボールじゃない。改良されたモンスターボールだ。デザインが違う。
「トレーナー?」
ユヤが訊ねる。
「ま、そんなとこ。でも俺は仲間を戦わせたりするのは好きじゃない。」
「は?」
「君さっきポケモンの力も借りずに自分で立ち向かってただろ。やっぱり痛みってのは他人に預けるもんじゃないよな。
面白いやつだな、君」
変なことを言うトレーナーだな、とユヤは思った。
だけどこの男の言うことに納得できる節はある。
「…俺トレーナーじゃないし」
「これ」
彼はそう言ってモンスターボールをユヤに差し出した。
「君が捕まえたポケモン。今から君もトレーナーだ」
ユヤはそのモンスターボールを受け取った。
アブソルの入ったモンスターボールだ。
「でも俺」
言いかけるが、男はその言葉を遮った。
「俺はシキだ。君の名前は?」
「ユヤ」
「ユヤか。いいトレーナーになれよ」
シキと名乗るトレーナーは、ベルトのモンスターボールを手に取った。
中から大きなポケモンの影が出てきて、空へと飛び立つ。
風が起き、ユヤは腕で風圧から顔を守った。
「じゃあな。またどこかで合うかもしれないけど」
シキがそう言ったと同時に空からポケモンが戻ってきて、彼を連れてどこかへ飛び立ってしまった。
空にはポツリと小さな影が出来上がり、やがてその影はどこか遠くへと消えていった。
「なんだったんだ、あいつ」
それにしてもでかいポケモン連れてたな、とユヤは思い返す。
なんのポケモンだったかは逆光で見えなかった。
渡されたモンスターボールを眺める。