LONG

□NUCLEOTIDE CHAIN ー序ー
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誰も知らない場所なんて
この世界には無い…


昔、母さんがそう言った。

俺はずっと信じていたんだ。




それでも、俺は
そこへ踏み込んでしまったー…



***uncharted...***



「母さん…母さんっ!!」



時代は変わった。
幼い頃から『戦争』とは魔王の住むどこか遠くの国だけで起きているものだと思っていた。

「その魔王は世界を全て自分のものにしようとしているのだよ」

「ふーん」

その時はまだ、おとぎ話を聞いているようだった。


だがやがて、戦火は全世界をも巻き込み
汚れた治安、飢渇、荒れ地でこの世は埋めつくされてゆく。


人間同士が血で血を洗う、
終わりの見えない戦い


それは、唯一の家族
母さんの命までも奪っていった…





17年前…生まれて間もない俺は、小さな篭に入ったまま
森の中で泣いていた。
親に、棄てられたのかもしれない。


偶々通りかかった女性…母さんが気づいて俺を抱き上げた。
彼女は独り身で、小さな村の小さな家で一人で俺を育ててくれた。

本当の母親のように深い愛情を注いでくれていることを、身をもって感じていた。



10歳の時、俺は拾われた子だと隠さず教えてくれた。

そしてこんなことも言った

「あなたが森の中で泣いていた時、不思議なことにあなたの周りの植物たちが
あなたをあやすように揺れていたのよ。
偶然とは思えなかったわ。
蔵馬、あなたは神の使いかも知れないわね。」


物心ついた頃から植物の気持ちが分かったり、自由自在に操ることができたりする不思議な力があった。

母さんに言われて、それは普通の人間にはなくて、自分にしかない力だということを確信した。


母さんに事実を告げられても
その後何かが変わるわけでもなく、本当の親子のように暮らした。

俺自身、寂しい想いをすることもなく
母親として彼女のことが好きだった。


そんな母さんを
村まで迫り来た戦火に…
悪の使い魔に殺された。


丁度街まで買い出しに出ていた俺は
何も出来ないまま、母さんを失った。


「かあ…さん……」



ただただ怒りしか無かった。

何も出来なかった自分も許せなかった。



俺は、この汚い戦を許さない

この戦の最高戦犯である魔王をこの手で殺めることを決意した。





 
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