とくべつ

□Sknowing
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寒い、とても寒い日でした。

Sknowing



空はのっぺりとした灰色で、目を凝らすと不思議なくらい真っ白な冷たさが降ってきます。
 あたり一面は雪景色になっていて、雪の真っ白さとビルや家々など建物の影との濃淡がまるで墨絵のように見えました。道行く人は、背中を丸めて早足で歩いて、まるでペンギンみたいです。

 公園です。公園にもたくさん雪が積もっていました。
 十歳ぐらいの男の子が木の下で探し物をしていました。雪に覆われていない地面から落ちた枝を探しているようです。しばらくして、少し曲がっていましたが、男の子の腕くらいの長さの枝を二本と、その半分くらいの長さのを一本、あとどんぐりを二つ拾って、足跡を辿るように歩きだしました。
 公園の隅っこの滑り台の近くでもう一人、少し背の高い男の子がしゃがみこんで両手で少し大きな雪玉を転がしています。近くにはそれより大きな雪玉がぽつんと置いてあります。そばかすの男の子はその子の傍まで歩くと「ん」と短く言って持ってきた枝を差し出しました。背の高い男の子は雪玉を転がすのをやめて「ありがとう」と小さな声でお礼を言います。二人の様子はまるで古いブリキのおもちゃのようにどこかぎこちないです。

 背の高い男の子は掛け声をつけて大きくなった雪玉を持ち上げようとします。でもちょっと重たくて持ち上がりません。背の高い男の子はがんばります。でもやっぱり持ち上がりません。
 「手伝おうか?」とそばかすの男の子が言いました。背の高い男の子は頷いて、二人で雪玉を持ち上げます。二人でやるとすんなり持ち上がりました。ゆっくりゆっくり大きい方の雪玉の上に乗せます。背の高い男の子はしゃがみこんで枝を下の雪玉の両側に刺して、そばかすの男の子はどんぐりを上の雪玉にうめます。どうやら二人は雪だるまを作っているようでした。

「リョウタはこの近くに住んでんの?」

 そばかすの男の子が背の高い男の子に話しかけます。
 リョウタと呼ばれた背の高い男の子は「うん」と小さく答えてちらりとそばかすの男の子を見上げます。

「ショウくんは?」

 そばかすの男の子はショウというそうです。ショウは、「ちょっと前に引っ越してきた」と答えました。リョウタは「ふーん」と言って「どこから?」と訊ねます。ショウは少しだけ考えて「海の見えるとこ」と答えました。

 リョウタは「できた」と言って立ち上がって、ショウも円らな雪だるまの円らなどんぐりの目を眺めます。リョウタは雪だるまの腕になった枝の半分の長さの枝を更に半分に折りました。ぽきりとちょっと寂しい音を立てて二本の短い木の棒になりました。リョウタはそれを円らな目の下にVの字の形で雪玉に乗せます。

「この町から海は見えないけど」

 リョウタは雪だるまの頭を撫でながら言います。

「でも楽しいところだから、また教えてあげるよ」

 それを聞いてショウはきょとんと不思議そうな顔をしましたが、「うん」と笑ってこっくりと一つ頷きました。
 少し嬉しそうな雪だるまも、二人に笑いかけていました。
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