短編

□それらになんと、名をあげようか
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最近、私はよく視界の中に彼女がいる事にふと気付きました

「捕まえた!」

「クダリさん苦しいですよ〜!」

「やっぱり、君は柔らかいね」

「………それはどこの部位を指してるのか激しく気になります」

ほら、今日もまた
クダリと楽しそうに話す彼女
よく見る光景
ですが何故かその光景にえもいえぬ苛立ちを感じました


「あれ、ノボリさんのシャンデラ?
あ、ランプラーと遊ぶの?今出すからちょっと待ってて」

「シャンシャン!」

「ははっ!急かさないでよ〜」

あぁ、また…

「シャンデラ、あまり人を困らせるような事をしてはいけませんよ」

私が声を掛けると、彼女は振り向き、ニッコリと笑う

「あ、ノボリさん!大丈夫ですよ〜このくらい困らせた内に入りません!
むしろ私のランプラーと仲良くしてくれて嬉しいですし!」

「そうですか…」

「仲良いと言えばノボリさんとクダリさんの仲も凄く良いですよね!
クダリさんと話してるとすぐにノボリさんの名前が出てくるんですよ〜」

クダリの話をしながらニコニコと笑う彼女
その表情に嬉しさと切なさが混じったような気持ちになる

「ノボリさん?どうしました?」

「え、あぁ、すみません」

黙っていた私の顔を心配そうに覗き込む彼女
胸が、痛い

「ノボリさん?」

「貴女様は、」

「はい?」

「いつも、貴女様はクダリの話ばかりですね」

彼女が目を丸くした
それでも、溢れた言葉は止まりませんでした
俯いて、更に言葉を紡ぐ

「貴女様はいつもいつもクダリと仲良くしていて、クダリやポケモンばかりに笑い掛けていて
私にももっと笑い掛けてほしい、他の誰より私を見てほしい、それなのに…」

「狡い、です」そこまで言って、急に頭が冷えた
私は、何を言いました?
不安になってバッと顔を上げると、彼女は顔を耳まで真っ赤に染めて、此方を凝視していた

「………ノボリさんのバカ」

彼女からの言葉に、慌てて謝ろうと口を開いたが

「そんな事言われたら、自惚れちゃうじゃないですか…」

呟かれた言葉と彼女の真っ赤な顔に、『あぁこの胸の痛みはそうゆう事だったのですか』と理解した
だがそれと同時に、目の前の彼女と同じように自分の顔が真っ赤に染まった事も理解せざるをえなかった


それらになんと、名をあげようか


(その胸の痛みに、"恋"という名をあげましょう)


‐‐‐‐‐
企画純情は海の彼方に消えていったに参加させていただきました

甘苦手なのに甘に挑戦して、玉砕

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