小説

□スキまでの境界線
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俺達に“特別”が欲しかった
みんなと違う関係が、名目だけでも良かったんだ
その優越感だけで良かったのに…


「なぁ、風丸」
「何だ?佐久間」

仲がいいと言えばいい
でもこれは友達という括りで固められた場所
まだたくさんの人がいて、俺だけじゃない

「・・・」
「…?おい」
「・・・悪い、用事無かった」
「お前な…」

佐久間は良いだろ、とむっと頬を膨らませた
こんなやりとりだけでもあり得ないぐらい嬉しい
そしてこんなにも好きだと言うことを実感させられる
独占欲なんかじゃない、もっと単純なこと
佐久間に触れてもいい場所に行きたかった
ただ、本当にそれだけ

「…っ」

俺はふわふわと舞う水色の髪が視界に入る
髪を手にとって触れてみたい、そんな欲求が出た気がした
1mも離れてない、手を伸ばせば誰だって触れる距離


「風丸?」

佐久間が何か思ったのかクルッと振り返った
俺は伸ばし掛けた手を引いて、慌てて返事をする

「な、何だ?」
「…風丸、何かおかしくないか?」
「は?」
「俺に何か隠し事してるだろ!」

やばい、何か感ずかれてる
佐久間は俺に顔を接近させてジッと目を見つめた


「・・・」

本当、天然で純粋、綺麗…可愛いな
後ろに手を回して髪を触る
思ってたより柔らかくて、とても触りごごちがいい


「佐久間…」
「?」

小さな頭を押さえて佐久間にキスをした

「んむ!」

柔らかい、しかも何か…甘い
いつの間にか外れていた枷、今までの溜まっていた物が一気にあふれ出していた
でもキスすると、欲望が止まらない
もっともっと欲しくてたまらないのだ

・・・佐久間、?
ふと口を離して、我に返った


「…悪い」
「…」
「…もうしない」
「…」
「…」
「…ばーか」

赤くなった顔と涙が溜まった瞳
佐久間はゆっくりと俺の服の袖を引っ張って背伸びをした



スキまでの境界線

(キスなんかで嫌いになんてなる訳ないだろ)
(…ありがとな)


眼帯症候群
様へ捧げます


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