小説

□なら、甘くするなよ
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一人が苦手、っていうのは
独りになってみないと分からない
もし独りが寂しいと思ったなら
その人はまだ独りになったことが無い人なんだ

だから気付いた
たくさんの奴らが隣にいたこと


「・・・不動」

もう誰も起きていない深夜
俺達は唯一24時間で会える時間なのだ

別に誰も規制はされていない
自分が勝手に作ったルールなのだ
相手もそれを望むし、これが一番いい方法である

「なんだ?また来たのか?」
「・・・煩い、いいだろ」

勝手にドアを開けて不動のところへ向かう
そして隣に腰を下ろした

2人だけの他の誰もいない空間がとてもここちい
ふと、不動の手を取るととても温かかった

「お前、冷たくね?」
「不動が温かいんだ」

そう言ってそのまま不動の手を自分の頬に着けて暖まる

どうも俺は、独りが苦手らしい
気付いたのは日本代表になってこっちに来たときだ
何故か独りでいるのに寂しさと消失感を覚えてしまっていた

今まで気づけなかったのは隣にいつも誰かがいてくれたから
鬼道や源田、帝国が俺の近くにいてくれた
でも今は違うのだ、独りで何もかもしなくてはいけない
昔よりも、強く立たなくてはいけないのだ

でも本当は……


「ホント、佐久間クンは餓鬼だな」
「なっ!!」
「また、顔にでてんだよ」

不意にキスされて言葉がだせずに奥に戻ってしまった
不動は一回溜息をついて俺から眼を反らす


「俺はお前が嫌いだ」
「・・・前も聞いた」
「そうだ、お前が気付くまで言い続けてやるさ」

そう言って繋いだ手だけ残して眼を閉じてしまった

……ごめん、不動
心の中で小さく謝る
俺は餓鬼でも、馬鹿でもないんだ
独りじゃない事なんて、とっくの昔に知っている
みんな俺の見方だから、みんなで頑張ればいい
一人でみんなの為に頑張ればいいって、知ってた

でも、俺は独りのふりをした
それが唯一不動が俺に優しくしてくれたから
その優しさが、俺を今までの闇を払ってくれた


「佐久間…」
「何だ?」
「俺に・・・甘えんなよ」

ただ、そう言った不動に俺も小さく呟く


なら、甘くするなよ

(甘やかしたいんだよ)


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