小説

□甘酸っぱい抱擁
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「風丸さーん!!」
「うるっせぇ!」


寒空の下、隣を歩くのは
部活では弱音を吐いたことがない後輩

でも、この前FFIに行った奴に片思い中だったらしく
落ち込み具合が凄い
部活じゃいつもと同じように振る舞うのに一人になるとすぐにこれ

我慢強い、ってか
普通あんなに笑っていられるところは感心するな

「うー」
「泣くな、煩い」
「速水先輩……冷たいです」


ちょっとくらい慰めてくださいよ!
と少し強めの口調でいわれた

後輩のクセして、妙に偉そうなのは
多分風丸だけが宮坂にとっての先輩なのだろう

でも、宮坂は俺の隣を歩く
歩幅も俺のが大きいハズなのに何故か隣にいる

ただ…こうやって宮坂が弱音を吐いたり
泣いたりするのが俺だけの特権ならいいと思うのは


「宮坂」
「はい?」
「風丸、のこと“好き”か?」

少し目を見開いてきゅっと口を噤んだのが見える
潤んでいた目が、さらに揺らいだ気がした

「……好きですね」
「・・・そうだよな」
「I like 先輩」
「はいはい」
「I love youです」
「はいはい」
「・・・スルーですか?」
「は?」


少し怒っている声が聞こえた

隣を歩いていた宮坂は止まって俺の後ろになる
俺も止まって宮坂の方をみた


一度も流れなかった涙は頬を流れる
しかも少し睨まれた

「先輩は意地悪ですね」
「は?」
「だから英語だけ成績悪いんですよ」
「関係ないだろ」
「有りすぎでしょ!」

正直言っている意味が理解できないまま話が進んでいく
何で2人しかいない会話で理解できない話があると言うことにも問題はあるが…


「・・・youは先輩です」
「……っ」


ふと、宮坂の力が抜けるのが分かった
俺は倒れて来た宮坂を受け止めて手の中に落ちた温度を感じる


「英語、僕が教えましょうか?」
「ったく…調子に乗るな」
「速水先輩にその言葉、そのまま返します」


酸っぱい抱擁


(好き、と恋、愛は違う)
(好きはへ恋、恋は愛までの発展途中)




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