小説

□温もりを抱く頃
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ザァー……

もう暗くなった外
夏は終わったんだなぁ、と思うようになった
時計の針は短針は5を刺している


「はぁ…」

真上から落ちてくる温かいお湯
頭の先から温かくなっていくのが分かる

・・・って勝手に陸上部のシャワーを借りてしまった
別に、大丈夫…だよな

今日の練習のとき強い風が吹いて妙に汚れてしまった
しかも髪が長くて大量に砂が着いてしまっている
ぷらす、部活終了後先生に終わった後呼び出されて最悪な状況だった

だから勝手に使わせて貰っている


「もう…早く帰りたかったのに…」


みんな帰っちゃって、俺は一人

・・・しかも真っ暗で、


「さみ、しいなぁ…」

少し目に涙が溜まる
言葉にすると実感してしまって、早く帰ろう、という気持が強くなった

ある程度温まって外に出ると冷たい空気が肩に触れて少し震えた
一様換えのあった体操服に着替えて学ランを羽織る

そしてシャワー室からでると


ガンッ!!

といい音がした


「ッ〜〜――…てぇ!」

ドアに人が当たった


「その声、……円堂?」

ドアの向こうには額を赤くした円堂が倒れていた
確実にこのドアの前にいたってことだよな…


「ってー、遅いぞ!風丸!」
「は…?」
「待ってたんだからな!!」


待ってた…?俺を?
もうとっくの前に練習が終わってるのにか?

嘘かと思うのに、目の前にいる円堂
嬉しいのに、素直に喜べない自分
目の端に溜まる涙は、零れそうになった


「・・・帰ろうぜ、風丸」


そしてパッと出された手
俺は湯冷めした手でその手を握った
温かくて、心まで満たされた気分だった


「・・・ありがとう」
「当たり前だろ」


しっかりと繋いだ手は恋人つなぎだったけど
一才、恥ずかしいなんて思わなかった

逆に嬉しくて
俺から強めに握っていた


もりを抱く頃

(温かい…)(俺も)




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