小説

□以心未伝心がいつものこと
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つらい練習の合間のとき

ふぁ、軽くした欠伸

何でだろう…
円堂にうっつただけでこんなに頬が緩む

「何笑ってんだ?」
「…何でもない」


円堂はキョトンとしてまた練習に戻っていった
俺はあいつの眩しさに惚れてここにいる

ただ、惚れたのは態度か…その心か

緩んだ頬は風に当てられて冷たくなる
辛いと知って選んだ場所はどれだけたっても変わらない位置
触れることのできる、唯一の“友達”
それを考えるたび、目尻が熱くなった

おかしいことなんてだいぶ前から知ってる
でもあの優しさが、俺に自惚れさせるんだ


「おーい!風丸っ!!」

「あぁ!!今行く」


少し遠い所から大きく手を振る円堂
眩しいくらいの笑顔が俺の表情を明るくした


「待たせ…」
「風邪か?顔赤いぞ?」


ぺたっ

このとき一番ビックリしたのは円堂の手が冷たかったこと
もっと暖かいかと思ってた
でも冷たくて熱くなっていた顔には少しヒヤッとした


「さっき欠伸してたし、風邪とか疲労が溜まってんじゃないのか?練習も段々きつくなってるし…」
「へ、平気に決まってるだろ?!」
「本当か?試合ちかいんだ、風丸いないとこまるからな!」

ちょっとした、こういう言葉に反応してしまう自分がいた
嬉しくてまた顔が熱くなる


「…あぁッ!!風丸の平気は信用できない!」
「ちょ!あ、待てっ!」

ぱっと腕を掴まれて練習を抜け出す円堂と俺
何故かこのときの円堂の手は額に当てた時より暖かかった


「風丸」
「なんだ?」
「心配かけるなよ」


どうしても自惚れてしまうのは
仕方が無いと思うんだ


以心伝心がいつものこと

(円堂、ありがとう)(ん?何がだ?)




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