零崎叶織の人間人生―ニンゲンライフ―
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あの日、刹那が姫乃をやった後、彼女の死体、その他諸々の事情は“最強”によりいとも簡単に揉み消された。
人間とはかなり薄情なもので一ヶ月もすれば彼女の存在など直ぐに忘れ去られた。
「助かったよ潤ちゃん」
『なに、愛する叶織のためだ。気にすんな』
「私も潤ちゃん大好きだよ‼」
『当然だ‼じゃぁまたな』
ばいばい、と言って刹那は電話をきった。
と、同時に跡部がR陣とマネージャーに集合をかける。
「いいかお前らよく聞け‼来週、青学と氷帝と立海で合同合宿する事が決まった‼場所は俺様の別荘があるハワイだ‼」
「は、ハワイー⁉」×全員
「なんだ、なんか文句あんのか、あーん?」
「はい!英語解りません!」
「俺も英会話は…ちょっと…」
そう言って勢いよく手を挙げたのは刹那。
気まずく言ったのは宍戸。
「英語?何それ美味しいの?」
「刹那…」
ーゴン!
「いったーい‼跡部暴力反対‼」
「お前ら‼今から死に物狂いで勉強して一週間で身につけろ‼」
跡部は刹那の頭を殴るとそう言う。
苦笑するその他のR陣。
見兼ねた忍足が助け船を出す。
「ま、まぁそないおこんなや。因みに2人とも、普段点数どんくらいとるん?」
「40点撮れたら奇跡です」
「……あかん。もはや無理や、宍戸は?」
「いや、俺は英会話がダメなだけだから英語はできる」
「宍戸の裏切り者!」
「え!?」
折角助け船を出したのに結局刹那は助けられず、忍足は頭を抱える。
宍戸はそれに苦笑。
「こうなったら、誰かが一週間つきっきりでやるしかないですね」
「つきっきり?」
「ええ、そりゃあもう泊まり込みの勢いで」
全員「泊まり込み…」
日吉のそんな一言に全員の目がキラーンとひかり、刹那に集中した。
「よし‼俺が刹那に教えてやるぜ‼なんたって英語は俺の得意科目だ!」
1番最初に発言したのは向日で、他の出遅れたメンバーも続く。
「お、俺が先輩に教えますよ‼日常会話くらいできます‼」
と、鳳。
「俺が教えてあげるC〜!」
と、芥川。
「おい、俺が最初に教えるっつったろ‼」
と、再び向日。
「いや、岳人には無理や。ここは学年上位の俺が…」
と、忍足。
「なに言ってんだ、そこは学年トップの俺様だろ、あーん?」
と、跡部。
「刹那は俺と2人で頑張るよな!」
全員「それじゃ意味ねぇ‼」
「あー、えっと…」
刹那が口を開くと一斉に彼女に視線が集まった。
全員に緊張感が走る。
が、刹那は誰かに電話をかけ出しみんなズルッとこけた。
そしてまた、あーだのこーだの言い始める。
「あ、もしもしアス兄?今週一週間暇?あ、一週間全部ね」
『一週間まるまる⁉それは流石に無理っちゃよ‼』
「えー…仕事?」
『は、ないけど』
「じゃ、いーじゃん‼英語を私に叩き込んで‼」
『あー、叶織英語破壊的っちゃからね』
「ゔ、そ、そうなんだけど…兎に角お願い‼」
『随分急っちゃね』
刹那がかくかくしかじかと話すと、軋識はうーんと悩んでいたが、止め(?)に
「まぁアス兄が無理だったら侑士に頼むんだけどね」
と、刹那が言うと
『すぐ行く。即行く。待ってろ』
と、キャラづくりも忘れてそう言い放ちプツリと電話を切った。
「なんだろ、ま、いっか」
うん、と一人頷くと未だに言い合いしてるR陣に向けて言った。
「あー、皆さ、折角で悪いんだけど、私お兄ちゃんに教えてもらうことになったから」
だから大丈夫だよ〜、とサラリと言ったのでみんな一気にガクリと肩を落とした。
いち早く動いたのは忍足。
「誰に頼むん?まさか双識さん…」
「まさか。あり得ない。アス兄だよ。レン兄すー…嫌いじゃないけどね」
ちょっと照れた風に言った刹那にみんなドキリ。
だが刹那の顔は直ぐにサッと青くなった。
ん?どうした、とみんなは思う。
よくみれば、忍足も心なしか青い。
「お前らどうした急に」
宍戸がそう疑問を投げかけても2人は答えない。
「うふ、うふふ」
変態じみた笑が刹那の背後の方から聞こえてきた。