零崎叶織の人間人生―ニンゲンライフ―
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「叶織ちゃん♪今日もかわええな」
「……学校でその名前で呼ばないでくれません?」
「ええやん、誰も居らんのやし」
「そして今すぐ離れろ」
そう言う彼女に対し、えーっ、と抱きしめる腕に更に力を込める忍足侑士こと碧識(あおしき)。
「離れとぉない、言うたら?「今すぐレン兄呼ぶよ」すぐ離れます!」
「わかりゃいいんだよ」
ーその後二人が雑談しているとガチャリとドアが開いて跡部と一人の見知らぬ少女が入ってきた。
「やぁ跡部、遅かったね」
「あ?てめぇ、いねぇと思ったらこんなとこにいやがったのか。サボってんじゃねぇよ、あーん?」
「ええやろ、少しぐらい」
「てか誰その子?」
刹那がそう言うと、跡部の後ろに隠れるようにいた少女がピクリと肩を揺らした。
「あぁ、新しいマネだ。一年の」
「あ、えっとぉ、姫乃でぇす。姫って呼んでくださぁい!」
ピシッと固まる刹那を横目にプッと忍足はわずかに笑うと姫乃にてをさしだす。
(刹那さんはぶりっ子ちゃんが生理的に受け付けない体質です)
「よろしゅう、俺は「侑士先輩ですよね!知ってますぅ!」…なんや知っとんたんか」
まぁとりあえず握手、と忍足が言うと姫乃は飛びつくようにその手を握った。
握手をしながら忍足は未だ固まっている刹那に視線を投げる。
ハッと気がついた刹那は少しだけ引きつった顔のまま同じように手を差し出す。
「わ、私は刹那よ。この部のマネ、三年よ。よろしくね」
「はい、よろしくお願いしまぁす。姫ぇ、マネのことよくわかんないからぁ、優しく教えてくださいね?」
笑顔でそう言う言葉とは裏腹に、彼女の刹那を握るてには力が入っており、爪が刹那の手に食い込んでいる。
無理矢理離すのもあれなので、そっとさり気なく手を離す刹那。
「姫乃さんは今日どうすんの?」
「他の奴等にはもう紹介すんでるし、今日はマネの仕事を見学してればいいだろ」
それじゃあ俺は行く、と言うと忍足を引っ張って跡部は出て行った。