人間シリーズ
□彼女が愛しすぎる
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「はぁ…」
またため息をひとつつき、ふと机の上のラップに包まれたオムライスを見た。
叶織に頼まれたオムライス。
彼女の好物。
まだ手のつけられていないそれは、とうにさめてしまっている。
サッと急に血の気が引き、時計に目をやる。
時刻はすでに1時を回っている。
遅い。
遅すぎる。
時間的にもだが、何より、叶織本人が“早く帰る”と言ったらそれは“絶対”であり、必ず8時前には帰ってくる。
遅すぎるのだ。
何かあったのではないか、と最悪のことが脳裏を横切る。
『今日は早く帰るから』
そういって笑った叶織の顔がいやに離れない。
帰ると言った。
確かに言った。
でも、“帰ってこない”ということは…。
「まさか…」
ありえない。
否、“ありえないと信じたい”。
嫌だ。
叶織が…いなくなってしまったら。
いなくなってしまったら?
違う、
“俺以外の隣にいってしまったら”。
“俺の隣からいなくなってしまったら”。
壊れるより、幻滅されるより、何よりも…耐えられない。
「叶織…」
探しに行こう、と玄関に来たところで玄関のドアがガチャリと開いた。