零崎叶織の人間人生―ニンゲンライフ―
□05
2ページ/2ページ
「アス兄…」
「なんだっちゃ?」
「もう…駄目っ!」
「あっこら!」
ダッと駆け出す叶織。
ガチャリと部屋のドアを開ければちょうど曲識が部屋に珈琲の差し入れをするためにノックをしようとしたと思われる手を持ち上げたまま突然空いたドアと中からでてきた叶織に驚いたように立っていた。
叶織は曲識に飛びつく。
「トキ兄ー‼もう嫌だ‼これはある種の拷問だー‼」
もっていた珈琲を零さずにしっかりと叶織を支えた曲識ははぁ、とため息をつく。
「また、か」
そう、実は叶織のこの脱走今に始まった事ではないのだ。
初日から3時間ぐらいのペースでこの脱走は始まっていた。
「もう嫌!私合宿休む‼」
「それはあかんなぁ」
そう言ってキッチンから顔を出したのは何故かずっと居候している忍足。
ちゃんと家があるのに。
因みに今この家には零崎一賊全員が泊まっている。
皆意外と暇なのだ。
「俺は刹那と行きたいで?頑張りや。刹那ならできるで」
「そうだよ、叶織ちゃん」
「レン兄…その両手にぶら下げてる袋は何かな?」
「あぁこれかい?叶織ちゃんの為に買ってきたのさ‼合宿で着る服をね!」
「どうせ店員さん殺して盗んできたんでしょ」
「いやだな叶織ちゃん、今回はちゃんと買ってきたよ‼」
「前は盗んだんか…」
笑顔でピースする双識に忍足が突っ込む。
「…ちゃんとしたものだよね…?」
「勿論さ‼」
そう言って双識が出したのは意外と普通の服だ。
全部ミニスカだが。
「兄貴、こりぁ短過ぎるぜ」
「こんなの叶織にはきせられんっちゃ」
いつの間にか出てきた軋識と人識は一枚のスカートをだし双識に言う。
「なにを言ってるんだい、このくらいの長さがベストなのだよ。そう、この丈のパンツが見えるか見えないかの際どい所がいいのだよ」
「なにを力説してもさっぱり共感できねぇが、これ、あれだろ?兄貴も見れるけど実際合宿で着るんだから他の奴らも見るんだろ?」
人識のそんな一言にピシッと固まる双識。
おいおい、考えられなかったのか?と全員心の中で突っ込む。
「ま、俺はかまへんけどな。刹那のミニスカ姿」
「だ、ダメだ!!いくら碧識くんとはいえ、許さないよ」
「買ってきたん自分やろ」
「さすが侑士、ツッコミ鋭い!」
「当たり前やん、大阪人なめたらあかんで」
得意げに言う忍足に対し叶織はそうだね、と笑う。
「とりあえずコレは持っていかないからね」
「……しかない」
しぶしぶ諦める双識。
そんな双識に叶織は一つため息を着くと、
「しょうがないから、持ったいないし別な時にきるよ」
と言った。
すると、パァァッと輝いた顔をする双識。
「叶織ちゃん‼愛してる‼」
「はい、はい」
「叶織はレンに甘すぎだっちゃ!」
「まったくだ、が、そんな叶織も悪くない」
「かはは」
「なんやなぁ…」
抱きつく双識。
わかっている、自分がこの人にとことん甘いことなんて。
「(私もそうとうなブラコンだなー…ほんと)」
自嘲するようにクスリと笑う叶織。
<だってそれは、>
((貴方が私を見つけてくれたから))
(さぁ、叶織英語再開するっちゃ。レンも離れるっちゃ)
(……はい)
(頑張れ、叶織ちゃん)