庭球/跡部×真田(関東大会、決勝)




交差する視線



フェンス越しに見るテニスコートは、とても眩しく感じた。それはきっと手を伸ばしても届かなかった夢の舞台だからかもしれない。

例えばあの時、どういうプレーをしていたら
等と考え出したら切りがないのだが。

もし、あの日あの時。
青学に勝てていたら、今、あのコートに立ち、アイツと対峙しているのは間違いなく、この俺様だ。

あの日の苦い思いが甦り、跡部はチッと舌打ちをしながら、越前を睨みつける。
真田と決勝で戦う男は俺だった。だが終わったことをいつまでもぐだぐだと考えていても仕方がない。

性に合わねぇ。

フッと自嘲して複雑な表情で視線をコートに戻せば。

ーー真田ーー。

暑い陽射しを更に暑苦しくさせるような熱気を帯びた、真剣な眼差しの真田と目が合う。
互いに視線を逸らすことなく、そのまま交差させたまま。
真田は跡部の前まで歩いてやって来る。

「跡部」
「負けんじゃねぇぞ」
「当たり前だ。負けるつもりで試合するわけがなかろう」
「真田……。俺の気持ち、テメェに託すぜ」

俺様の想いも一緒に連れて行け、とフェンス越しに絡ませた指先から伝わる想い。

「俺は負けない。立海の為、幸村の為、自分の為……そして今、受け取った貴様の分も」

静に目を閉じ、跡部の想いを感じ取ると絡ませた指を解き、フェンスに背を向ける。

一歩、また一歩とフェンスから離れると真田は跡部の熱が残る、その手でラケットを握り締めた。

貴様の想い、しかと受け取ったぞ、跡部。
本音を言えば、このコートで貴様と戦いたかった。しかし、相手が誰であろうとも負けてはならぬ。

跡部の熱い視線を感じるまま、真田は越前を見据えた。





終幕.2018.10.24.


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